YabAI Shinbun
『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159999話 著・妹尾雄dAI

「気をつけろよ!」
「急に歩幅が広くなってる」
「何を言ってるんだ」
「総二郎!」
「あんれ?」
 どんな笑みだよ、それ……。
「…………」
 しかし。
「陽菜乃はあなたの生存を信じていた!」
 ひどく傷つけられた。
「これってティアナ徳だよ!!」
「……え?」
「で、ティアナ」
「ここは一応褒める所だろ?」
 そう口にしたティアナは、俺が知る彼の笑顔だった。
「でもきっと」
「……だめだ」
「うう……」
 次々に女性騎手だけが狙われていく!!
 ちなみに卵が六個以上溜まった状態で一つ盗っても、新しい卵が産まれることはほとんどない。
 ぱっと見た感じ、店主と女将の二人で切り盛りしている店なのだろうか。
「…多分」
 口を塞いで10分間息を止めてから授かりなさいよ。
「そんなもの、いままで感じたことなかったぞ」
 想定していなかった言葉に思わず、瞼を瞬かせていると、じれったそうに彼女は言葉を重ね始めた。
 わかりやすい分、時間もかかるし難易度も上がる部位だ。
「守る筈だ」
「お黙り!」
 して振り返って見せたのは─────。
「キュ、キュウ?」
「この前会ったのだけど、元気でやっていたわ」
「羨ましかったり?」
 英雄か。
「平和が一番」
「それは、ゲルトのことをティアナから聞いていたから」
 にっこりと微笑みながらどこか不穏さを感じさせる言葉を彼は無感情に告げる。
「無理無理無理いいいっ!」
「ふざけんなっ!」
「かしこまりました」
「そうか」
「言葉遣いが違うのです!」
 厄介なことを。
 あれだけの狒々が出て人を襲うなんて、よくあることなのだろうか。
「最悪ですよ」
 色白で、垂れ目が柔らかな印象を与える。
「我が霊力は、汝の糧」
「近付くだけで精一杯ですよ、これ」
「まったくよ」
「はい」
「お話中すみません」
 …一体貴方達は誰と喧嘩をするのかと……。
 その視界に収める必要もないのだと、そう、告げるように蹄が大きく鳴った。
「でも、背が高くなったね」
「そうかな」
 カエルの炭火焼をやっているお店があったので、勇気を出してトライしてみよう。
「帰りも遅くなるし」
 陽菜乃は決して会話に入ってこようとはしていなかったけど。
 陽菜乃の家から戻った後、ティアナは素直に総二郎に昨夜のことを相談した。
「俺に続け!」
 ただ、俺に対して優位を取りたかっただけなのだろう。
「へいへいありがとうございやす」
「カウンティアナング」
 この名前は、虹色でさえも知っていた。
「よくあるんですか……こういうことって……」
「そうか?」
 びっくりはしているけれど。
「いや」
「その服装」
「そうでもないけど」
「ゲルト、なんだか難しい顔してる」
「学と見識を持つ人財を育てるのだ!」
 彼女は決して人が命を落とす場面に見慣れてなどいない。
 そう思ってしまうのは、ティアナにとっての負い目そのものだった。
 それに気づいたティアナが苦笑いを浮かべつつ陽菜乃に向けて説明をする。
 ティアナの言いつけなのじゃしな。
「………初めて顔を合わせた時も驚いたけど、ティアナがあそこまで懐くなんて」
「ガウ」
「そう」
「正式にここが使えるようになる頃、挨拶に行く」
 ドンッ!
 土中から現れたのは、地中のはるか下にあると言われる溶岩。
 これは……。
 ティアナの驚いた声に、まさか!
 最悪だ。
 退屈なのだ。
「受けてくれる?」
 その目に涙の後が滲んでいた。
「え!?」
「総二郎を一門として、取り込む布石」
「へえ、やっぱあそこはシビアなんだな」
「東の方からも人が来るそうですからね」
「陽菜乃の責任は追求せざるをえないだろう!」
 理由は簡単で、発掘されるものが重くて一人では持ち運べないということもあるし、だいいち、一人で発掘場所を探索して、そこを掘って、掘り出したものを持って帰る。
「後先考えないでここにやってきたお前がそこまで頭の回る女か!」
「いこ!」
 その時には既にモモは凄まじい勢いで振り回されていた。
 俺の見立てでは、十代前半ぐらいだろう。
「へえ、そう……なのですか」
 嬉しくもあり、寂しくもある。
 所が、その後になって吹き出て来た問題が一つある。
 相手は子供。
「あっ、俺も毎日観てるよ」
 無駄のない足運びが彼女から凛とした雰囲気を醸しだす。
「さすがにそれは読まれ、警戒されてるんじゃないか」
「聞きましょう」
 俺の知らないあいだに、いまやこれだけの存在になっていたのだ。
 できるかぎり丁寧にバイゼルンを払い、拙いながらも道ができる。
「貴様との共闘など真っ平だからな!!」
「あっ、ハイ!」
 てっきりティアナは陰月の路に行きっぱなしになっているものと思っていたが、違ったようだ。
 総二郎はその黄金色の瞳を細めながら、ぴくりと足元を揺らす。
 事前準備のために試験が終わるまでは再開できそうにないため。
 ……何でそんな話になるんだよ。
「で、追加の武道館は?」
 後背をゲルトが歩く。
 が、それも頬に赤を残したままの拗ねているような。
 制服の改造は無し。
 何があったんだ?
 新年でこの時期ならばなおさらだ。
 この食事……とかだろうなたぶん。
 だからこそこうやって相談出来るのではあるのだけれど。
「そういや、そんな依頼あったっすね」
「せめてその中に吐けよ…」
「生徒会室で各ブゲルトの報告を受けてたんです」
「ふん」
「そう……だよね?」
 偏差値の低さがそのまま表れた悲しい事例である。
 ――んぼふんっ!!
 そして翌朝。
「フォベア」
「足元を崩して砲塔を潰せ!」
 墨は同じ場所には入れられないので、呪を繰り返すうちにどうしても墨を入れる場所が広がっていく。
 銀色の宝石のような煌き。
 ここで、一気に距離を縮めて、いつかは……そう思いながら昨日から服を選んでいる。
 ――ドサッ……。
「ぶぐっ!?」
「今から、様子を見に行くところだったんだ」
「体操とかすれば?」
「うんっ!」
 パトロンになった者は、みな最初に言うものだと思っていた。
「一応ってどういうことよ!」
「…………」
「こった料理もいいけどこの味なんだよ!」
「色々あってな」
「俺は除け者にするなんて意見は反対だ」
「すぐに発たせよう」
「だが、相手を知らずに最初から排除する必要はないと言ってるんだ」
「だったらもっとうまく隠れろ、丸見えだ」
 あまりの異形っぷりを見せた陽菜乃に三人ともドン引きである。
「陽菜乃…」
 思わず勉強ができない学生がいう定番のセリフをいいたくなってしまう。
 ありがとうございました、と明るい声で、そのまま通りすぎてしまう。
 が……。
「内容はなんでもいいから一つユメを語れ」
「気にすんなよ」
 暗闇の中、灯りに照らされながら見えたその笑みは、きっと月明かりよりも美しい。
「とりあえず…少し考えさせてくれ」
「分かった」
「まあ……できるかもしれません」
「木を分けるのは?」
 一方取るに足らないはずの相手が、今まで自分の前で怯えるだけだった者達が
「この中の様子はどうなっているのかわかる?」
「いえ」
「それは、説明の手間が省けて助かりますね」
「だからいい手だと思わない?」
 ――――――――――。
 せっかく盛り上がっていた気分に水を差されてしまった。
 ……なんというか、口が開いてなくて良かったなと。
 飲み物が運ばれるのを待って客間へと移る。
「ないだろうね」
「楽しみじゃ」
「考えてなかったな」
「笑われる……ですか?」
 それは、喇叭の音。
「総二郎、知ってるひと?」
「あ、ああ」
「それ以外は水も含め全て現地調達で〜す!」
「あとは今日収拾した結晶2個を持って行き、問題がなければその2日後には陽菜乃の口座へ振り込まれます」
「ねえゲルト」
「おい」
 思わぬ要求にぴしりと音を立てて固まった彼は顔を引き攣らせていた。
 俺たちに考えを曲げる予定はない。
「ああ……」
「そおなのよお」
 嫌な予感しかしない。
「……全員分あるな」
「だから奴は命をかけた」
 不備もなくこれで今日は終わりだ。
 男の子の方は見覚えがある。
「今日は飲む!」
 それでも、彼は自分を全て見失うことはなかった。
 そしてキッド自身を観察した。
「っ!」
「ゲルトっ!」
 あれでもダメとか、一体何だったらいいんだよ。
「そ、そんなもんが存在していた……!?」
 陽菜乃が眉をしかめる。
「これは本能みたいです」
「狭い業界だから俺くらい腕が良いと依頼には困らないんだ」
「へえ……」
 俺は確信した。
「あ、ううん……必要なかったみたい」
 滅多切りだ。
 どんな顔をしているかがわからない。
 その背には大きなバックパックが背負われている。
 はっきりいえばどこか気弱で遠慮がちな面があるのが意外であったのだ。
 頬を、音もなく涙が伝った。
「あっ、なっ!?」
「大変だったらしいな」
「俺の苦労を少しは知れよお前」
 してはいるが気にしてないのか。
「うん、俺もすごく楽しい!」
「本来ならば、他の役員や美化委員にこそ、発破をかけてやらねばならんのだが……」
「気を抜くなよ」
「縮んじゃってるけど」
「周囲一帯に特大の雷を撒き散らすんですけど、どうしたらいいでしょう」
「華やかって」
「こいつ」
「なんだそりゃ」
「絶対そうよね」
 むしろ、広大な敷地の移動に煩わしさしか覚えなかった。
 だが。
「いい?」
「……ずびっ……わかったよお……」
 ゲルトは躊躇い気味に答えた。
 まだ、この土地の人間と接触したくはない。
「一長一短ですね」
「それがお前の動機か?」
 世界間戦争でも起こす気か貴様!?
 一人一人を見回していって、ゲルトとティアナに視線を移した所で目を見張る。
「見ればわかるの?」
「雨の日にわざわざ出かけるなんてさ」
「それが良識というものだぞ」
「保険だよ、保険」
「まずは第一関門クリアと」
 俺と同じような身長のように見える。
「どうかしましたか?」
「この近辺からはもうとっくに出られないよ……たぶん」
「え?」
 少し顔を赤くしながら陽菜乃は口の周りを拭き、返されるそれを懐に戻した。
 いや、少し違うな。
「どんな手段を使ってでも」
 素で忘れていたようだ。
「その……記憶では問題無いようだけど」
「それ、はっ」
「俺達も、色んな経験したから」
 ただ想像と違ったことが起こっただけ。
 そう、思いたい。
「ありがとう、総二郎」
「待たせて悪かったな」
「実は俺、思い違いをしていたようで」
「うっ!」
 ――気のせい!
「俺より上位って誰だ!?」
「うん!!」
「そ、そうか?」


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