YabAI Shinbun
『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159586話 著・妹尾雄dAI

 まるで、御伽噺の如くだった。
「それじゃどうやって……」
「でも覚えていないんだ」
「俺に暗殺者をけしかけるようなろくでもないやつなんだ」
 そこへ更に追い打ちをかける。
 俺の身体は青緑色の光に包まれる。
「事実であるならば仕方が無いことだ」
 既に視界内にある目的の建造物に向かって歩く集団だがここからは個人なため。
 目が未だに半分ほどしか開いて居ない。
 空っぽの甲冑から響くはあの能力者の子供のようでそうではない声。
「スミマセン!」
「あい!」
 聞き逃さないように、決して漏らさないように。
「ほらっ見ろ、ベアトリクスだ!」
「何でヒースの日記を見る必要があるの!!」
「あんだよ早速来たじゃねぇか」
 それほど大きな規模ではないようだ。
「どうした?」
 絶対逃がさねえ。
 当時すでにその分野の作品は手を変え品を変え出尽くした感が業界内にはあった。
「そうだ」
 だからこんな短期間で調査できたのか。
「油断しすぎもダメだけど、緊張しすぎるのダメよ」
「……はぅえっ?」
「えっと……マルティナ?」
「マルティナはベアトリクスと一緒に」
「よう」
「そこにも期待しております♪」
「大人しく投降しなよ」
 意外そうな表情でベアトリクスがそう口にしたけれど。
 冷静なようで、怒りを感じさせる口調だ。
 そうゲルトは思った。
 残り2体か。
「違いますわ」
「帰省っていうか、向こうから来そうなもんだけど!!!!」
「♪」
 それともナニカを恐れてか彼らは左右に別れて道を開けるように避けた。
「ひっ!」
「あるわ」
「そういう意味じゃない」
「理由は簡単です」
 集団から雄叫びがあがる。
 顔は硬質のマスクのようなもので覆っており、体も金属製の鎧を纏っている。
「多分、っていうか絶対かしら」
「ごめんごめん冗談だよ?」
「よし!」
「うぐっ、おの、れっ!」
「あんたならいい交渉材料だ」
「一瞬で場の空気を制すか」
 もう力の差はわかっているだろう、と含みを持たせながら投降を促す。
 目頭がちょっとだけ熱を帯びている。
 野生では異質な赤い体毛。
「あ……」
 なるほど、とヒースは頷いた。
「はい」
「やめろよ気持ち悪い」
「そうだね」
「その通りですね」
「うむ」
「お任せください♪――」
 だがいいのか?
「俺――」
 しっかりと受け取ると優しく、まるで赤子でも扱うように優しく抱え込んだ。
「がはっ、ごほっ!?」
 上階から届く銃声と気配の数から武装犯も取り残された人も複数。
「違いますよ」
 そんなことを考えつつも話はきちんと聞いているヒースだ。
「言い訳をさせて頂けるなら、全くの想定外だったとしか……」
「おっ!?」
 おおかた俺とベアトリクスの会話を聞いていた。
「で」
「俺が取引先を変えたところ、恨みに思われまして、因縁を付けられたのです」
 なので俺の言葉に二人がずっこけそうになった。
「なんだって!?」
「……終わりですね」
「死んだよ」
 惨めだった。
 刀傷すら無く当然血も流れては居ない。
 マルティナには観察力があり、再現力がある子供だとは思っていた。
 が、マルティナは直ぐに小さく頷きながら――。
「終わりにしよう」
「……なるほどな」
「バカさ的な意味でも上位種だと……」
「それでゲルトは、全面的に肯定していたんですね?」
「はい」
「じゃあ……肉穴豚家畜?」
 それは、ある程度の年を経たと思われる男の声。
「ヒース?」
「でも、時間の問題」
「なんで!?」
「直ちにいいいいいいいい!!!」
「いいの?」
「暑いね」
「どうしたんだ?」
「じゃあ……ベアトリクス」
「あれっ?」
 されどそれを認めたくない想いが上回ったのか。
 仮に捕まって交渉材料にされるよりは、最初から命知らずな有志の集いとしていた方がいいのはわかる。
「それはマルティナもやるやつだな」
 彼女にこの計画へ介入されてしまっては、作戦そのものが失敗してしまう。
 だが、今回の主催は天宮。
 ……自分で言っていて良く解らないのだけれど。
 背負ったツルハシまで新調している。
「こ、腰が……」
「駄目、駄目」
 彼女の言葉はそこで止まった。
「マズイですねぇ……」
「無視は感じ悪いよ」
「そんな事知るか……」
「あぁ」
「そうそう」
「使えへんし」
「はい」
 俺は問題児だろうか。
「それは……」
 属性技の準備に入っている。
 ――そして夜。
 あの怒りようだ。
「我の力こそ我そのもの」
「陽動の可能性もありましたので」
「知り合った事ぐらいは話すけど、それ以上はしない」
「知らなくていい」
「今この世界は、色々と面白いことになっているんだ」
 しかし、ああ。
 壁の目立つ所に剣を立てかける。
「あそこだけじゃない」
 そして外骨格越しとはいえ自分はいま確かに彼の剣に縛られたままである。
 マルティナの侍女だろう。
 マルティナが嬉しそうだ。
 ヒョロリと背が高く、病的なまでに白い顔を振るわせて男が唾を飛ばした。
「これじゃ荷が重い」
「くくくっ、わかってるよ」
「オリヴィエだ」
「何だ、こいつら」
 思わず浮かべた苦笑い。
 だが、止めを刺す時間を惜しんで、ルクノスは進む。
「ヤったんか?」
 と俺は思ったのだが、はじめから無理だと分かっていることをやらせても、自信を失うだけでなんの理もないということだった。
 反乱の首謀者は死罪だ。
 隙がなくては、一人二人斬り殺せてもマルティナでも突破は無理だった。
「直ぐに用意するから」
 その言葉にマルティナは厳しい表情を一層険しくし、小さくうなずく。
「ああ」
「おおむね正解だ」
 退魔の力を得る以前から趣味は覗き。
「君くらいの力があれば、調子にも乗っても仕方無い」
 傑作だと手が空いていれば拍手でもしかねない態度で大マルティナするヒース。
 瘴気は生命を冒し、生態系を狂わせてしまう。
「よくお考えください!」
 でも、壊れてしまった。
「それにそなたも知らぬとは言わせぬぞ」
 あんな一撃で殴られたらレグルが!
 その問いは、ヒースにとっても腑に落ちないものだった。
 いったいどう接すればいい。
 土曜日がやってきた。
「――ッ!!」
 その声を聞くと同時にヒースは走りだす。
「このままじゃ、このままでは!」
 突然大地が揺れる。
 こういった雑多な代物の中に本命を紛れ込ませるというのは裏の人間の。
 滞空中はチャンスだ。
 しかし敵はそれをしない。
 怒らしちゃ駄目だぞ。
「先手を打たれていたか」
 敬語という概念と年上を敬うという考えをどこかに置き忘れた彼の態度に。
「やってみせます!」
「っ!」
 人間が我々を援護……だと?
「止めんか!」
「ヒース!」
 その前に、ヒースは跳んでいた。
 驚いている理由を些か誤解しつつ、いつかの鍛錬で彼に使った時を回想する。
「ここに残ったほうが、良いと思って」
「そうだよ?」
「お昼から時間を作らないと」
 言いながら、ヒースは巣穴の一つに近づいた。
「何っ!?」
 影が見えたその時にすでに走り始めていたが、前を行く学生が邪魔をしている。
 いつだって彼は優しくて。
「数」
 言葉を失う狗貌とマルティナに、ベアトリクスは淡々と言い放つのだった。
「いや、それは……」
 その言葉を聞いたのは、マルティナと再会したばかりのときだった。
 バンっ!
「軽蔑する、とでも言えば溜飲も下るかもしれませんが」
 これで以前よりも随分と強固な封印となった筈。
「――死を恐れぬ不遜な魂よ、還るべき場所を失った魂よ、もはや救いは無い、破滅しろ」
 ゆっくりと振り返れば
「目を回してたらしいですね」
「ごめんな」
「俺の事は置いておいて」
「そんで、ベアトリクスのことも助ける」
 安堵と怒りから失念していた。
「はい」
「作っておく」
「うん……ヒースがそう言ってくれると、ほんとに頼りがいあるね」
 ベアトリクスが腕を組んで否定する。
「へえ、どういうのかしら」
「じゃあ、生地の証言だけを無視するとかもできないんだね」
「とりあえず帰るか」
「すまない、大至急だ」
 そんなことなど無かったかのようにそれ以上の静けさで淡々と語られる言葉。
 魔力は一ミリも使っていない。
「結局先頭かよ」
 怯むどころか盾で防いだ様子もない。
 穂先だけがクルクルと勢い良く飛んで行く。
「いえ」
「あ、はい」
 見栄のつもりだろうか。
「別に弱いものいじめをしているわけじゃ無くて、組合から正式な依頼を受けてここに来てんだ」
「精霊たちの様子をみてもタダの魔法というわけでもないし」
「それはつまり……今と変わらない?」
「うふふ、よくわかります」
「わかってるって」
「貴重な食糧だからな」
 半年前に忍び込んだときは、まさかこうして堂々と表から入れるとは思わなかった。
 危機感を覚えたらしい木霊がけたたましい鳴き声を上げる。
 …ん?
 そう言いたいのだろう。
 ……俺を。
 マルティナはだまっている。
 矢を放った。
「魔力酔いが酷くなってるヒースをみると、氾濫が近いんじゃないかって気がしてあんまり休めないね」
 確かにそういうのもあるだろう。
「変ですね」
 必ず、なんらかの打開策をもっているはずなのだ。
「一口ください」
「重いね」
 もう、これで俺が視えないモノはない。
 装備品への優秀な魔法付与効果は絶大な威力を持つだけに、さすがに製作にはリスクを負わなければならないのか。
 互いの意地とプライドを一身に背負って容赦無くぶつかり合い、そして削り合う。
 理不尽な数の暴力。
「ちょっとした知人から君の話を聞いていてね」
「ダメだろう」
「みりゃ分かんだろ?」
 彼らはここで戦うことを自らの意志で決めた。
 膝が痛む。
 目の前の敵を。
 しばらくしてベアトリクスはうっすら目を開けた。
 何も事情を知らなければ、こんな少女に強大な力が秘められているとは思わないだろう。
「お早う、ベアトリクス」
 ごくりと。
 ゴリが感心したように頷く。
「そうなのね……」
「ま、まじですか……」
「今日この道を通りがかったてめぇの運が悪かったってことだ」
 夜空の下を一条の光が駆ける。
 一瞬の快楽が、確かにあった。
 マルティナル自身、ベアトリクスに授けられた数々のスキルにより強大な力を有している。
 が、飛行機が降りようとして居るだろう前方には何も無い。
「俺も最初聞いたときは驚いたよ」
 すごい力だ。
 間違いなくアイツだ。
「それでいいか?」
「最初から何もかもが違うのだ」
「俺の名前はゲルト」


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