YabAI Shinbun
『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159582話 著・妹尾雄dAI

「俺って友達少ないからね」
「で、なんだ?」
 それにしても何故こいつは此処まで憤激している。
「もうひとつはどうじゃ?」
「そうか」
「さてそろそろかな」
「あんなに広いとは」
「それに、この一年はお世話になった方々が非常に多いですから」
 勝負はこれからだ。
「最大の問題は、タイミングだ」
「風の流れがある」
 もっとも、あの日の行動は後悔していないし、悪いことばかりでもなかった。
「それはあの人に任せる」
「ちょ、ちょっと……」
 素っ頓狂な声を上げているのはもちろん闘うOL、リンである。
「女子に?」
「気付いてないと思う」
 離れで生活する様になって買った物も結構な量あるにはあるけれど、それでもこの人数なのだからアッという間だろう。
 なんか申し訳ない……。
 頭の中をその危険な言葉がぐるぐると音を立てて回る。
 なんだか身の危険を感じるのだ。
 溜め息が出る。
 周りの墓参の者達が一斉に膝を付くのを見てティアナも慌てて膝をつく。
「そっか……」
 祈りにも似た俺たちの想いはしかし届かない。
「まずは、ヒース皇子の後援者である総二郎の地盤を叩こうと思っている」
 総二郎の腰を見て、リンが言った。
 大きく突き出た腹の前で手を組み落ち着いた態度で座っているティアナだが、その静かな口調の中には確かな怒りが込められていた。
 言っていることは間違っていないかもしれない。
 どうやら知り合いらしい。
 ヒースは目礼して、店内を見回した。
 尾根を進んだ先は下り坂だった。
 片付けを始めようとするのを止めて、総二郎はリンに向かい合う。
「リン?」
「――退避!」
「ぁ、いえ……」
 ノックをしてドアを開けてくれた案内の女の人は、その部屋には入らずに、それでは失礼しますと言って帰っていった。
 遅れてやってきた技術科の教師に確認をとれば首肯が返ってきた。
 その瞬間周囲が更に騒めく。
「ぁ……わりぃ……」
 水中から背中を押され、水面に上がることが出来た。
 ハハハ。
 今言った!
 だが、ここから地面に叩きつけられるまでの間に彼はどう動く!?
「不気味なほどに普通の対応をされてしまいました」
 俺は、クズには容赦しない主義だ!
「事実だからだ」
 その容貌は正しくおぞましいという以外の形容詞が見つからない程で……顔は長い黒髪で隠れてしまっていて顎や頬の一部くらいしか分からないし、白い衣服がところどころ千切れて手や足の皮膚が見えているのだけれど、あごや頬の部分も含めて、見えている部分には目が無数に点在する。
「貴方も皆も」
 そう言って座ったのは畳の上に正座をしたからだ。
 お誕生日にもなると大変だ。
「家族」
 公式に新情報。
「ソウ……」
「なんでですか!」
 そしてリンにだんだんと感化されてきたのか俺の言葉遣いも変わっていく。
 登録名や内容を誰かに見られた場合を考えてある程度偽装しろと忠告しながら。
 倉庫の鍵を開けながら、リンが訊ねてくる。
「普通」
 久しぶりにゆっくりと会うことの出来た親友を前にして、すっとんきょうな声をあげる。
「あ?」
「そもそも狙撃と空襲のし放題だ、さてどうしようか」
「はい……」
「分かった!」
「………」
 何があったのだろうか?
 優先順位が逆のような気もするが、ぷんすかと怒りながら話していたリンにとって、この作戦がいかに得るものがない無駄なものであるということは十分に理解できた。
 俺には力がない。
 汗も引っ込むくらい冷たい心持ちを心がける。
 彼とて分からないわけではない。
「なっ――なんでそうなるんだ!?」
 体高だけでも胸元に達しようとしている。
「そうだよ」
 だが、気付かないならそれで良いか、とヒースは思った。
「ありがとう、俺ならそうしたよ」
 ようは、貸した相手が金を返せなくなるようにさせる作戦というやつである。
「さてどうしよう」
 生み出した。
 三ヶ月。
 昨日。
 何を言ってるんだこいつって顔だ。
 振り向いたら若い女性。
「そこで待ってろ」
「ありがとうございます」
 誰かが俺を見たら変な格好で空中を滑ってるように見えたりとかしないのか?
 …やり手だ。
 この言葉にそう叫んだ者は世界にわずか数名。
 そう思えばこの景色が見れなくなるのもそう遠くないんだろうなあ……。
 そこにいるそいつは誰なのか、そして誰と通話していたのか、そいつ意外に知る者はいない。
 生徒全員での修学旅行と聞いた彼が一番に気にしたのはそこだった。
 久しぶりの狩りだ。
「どうした?」
 足音が近づいてくるのに気付いたか、少女が顔を上げた。
「……あれ?」
 リンはその答えに、一度びくり。
 と咄嗟に思い付く。
 ――あれ?
「ティアナ」
「あなたで二人目です」
「おお、十周年おめでとう」
「楽しいな、色男」
 ない、といいかけて声が止まる。
 誰が見ても重傷。
 そこでティアナはまたも苦笑した。
「ただの秀才に過ぎない」
「誰からも見くびられ、誰からも侮蔑された」
「うん、何も問題はない」
「全然考えてない」
 総二郎とリンが駆け寄ってくる。
 総二郎はティアナからランタンを受け取り、机の上に置いた。
 勿論、リンは己が思う最善を成したと信じている。
 横合いから声がかけられた。
 他が老朽化してきているため、新しく備え付けた扉だけが新しく、目立って見えた。
「……人の話を聞いてない奴らだな」
「なにわともあれ、名前が必要だな」
 だから今もこうして、クエスト終わりにヤケ酒をしている。
 対等の仲間だ。
「俺はできんがな」
「なら、分かるよな」
「こいつが勝手に言っとるだけじゃ」
「そうだな」
「誘ったんだけど、忙しいらしい」
 だから生徒会執行部。
「この座敷なら入り切るさ」
 最初の違和感は広げた腕。
「まぁ、俺はぼちぼちといった所だよ」
 総二郎は冗談だとおどけた様子で肩をすくめてみせた。
「あふん」
「ヒースの面汚しめ!」
 ティアナの文句はそもそも浮かんでいない。
 推量があたって、思わず口元に笑みが浮かぶ。
 宿の裏にある水瓶いっぱいにするには、何往復もしなければならない。
 指先に伝わる慣れた柔らかい感触。
 待っていたのはヒフ。
 呆れ顔のヒースが言ったのは、意訳すれば、鬱陶しいから視界に入らない所に行っていろ、ということである。
「……ぐぁっ!!」
 今日は女子二人が先に見張りだ。
「それでも大変ですけれどもね」
 思わず一歩退きそうになるような重圧。
「はぁ、ティアナどころじゃないわい」
 何があったのか。
 ゆえに問答無用で引きずり出して、持ち込んだ者を含めて強制的に。
 人らしさを覚える態度とは裏腹にそれ以外の全てがあまりに不可解過ぎる。
 欠伸をしながら横になって布に包まるが、眠い筈なのが全く寝付けない。
 その上で、俺に何とかならないかと問うてくる。
 不味いと感じたその瞬間、目の前の男は残像だけを残してこちらへと向かって来る。
 いやまあそりゃそうだけどさ……。
「ティアナって、今時ないだろ?」
「あのね?」
「なんか釣れたかよ?」
 俺は戦慄に身を震わせた。
 その翌日、リンからも礼服が届いた。
「当代のティアナがその罪を背負い、苦しむ者なら」
 リンとティアナはジト目で俺を見るし……。
 周囲を見渡すと人の姿はないようである。
「しかし青天井という訳にもいきませんのでそのあたりはご理解を」
 向こうも目をそらさず俺も目を逸らさなかったので、何か言っとくかなくらいの気持ちで話しかけてみることにする。
「はい!」
「大成功を信じて疑いません♪」
「最初から……ですか」
「その時、蹂躙されるのを良しとするのかな」
 結局、他に誘拐を手がけているような組織を幾つか聞き出せただけだった。
「いいねぇ、あとで見せてやろうぜ」
「そりゃ、思わないけど」
「浅ましいこの身を、強く恥じております」
「ハハハ……」
「ア、ティアナ!?」
 まさかの酷似だった。
 ことり。
 勿論、裏側に表示させつつ。
「湯も用意できるけど前払いだよ」
「何か考えがあるのだろうか?」
 それがナニカを呼び出す類の。
 あのリンという子。
「戦争……かな」
「歩調や呼吸は自然と合ってしまうからな」
「そだっけ?」
「んっ……」
 その為に早めに部活を切り上げたのだけれど、一人で部室へ入った瞬間、何か異様な視線にさらされたと言う。
 まあ、小さくも無かったけれど。
「そんな連中の中に、ティアナを放っておいてもいいのかよ?」
 ヒースがやってきて総二郎に声をかけた。
「様子でも見に行くか」
「うぎっ!」
 シンプルさ。
「それって一人頭、幾らぐらいになります?」
「まぁもう今日は時間が無いから、早く帰って学校へ行く準備をしないとね」
 それへの観念。
「仕事前は控えるように言ったじゃないですか」
 付けられていることを少しも疑っていない。
「けど、肉を食ったことはあるだろう?」
「くっはっはっは!!」
 上だ――!
「あそこは宿もあります」
「もう全身ボロボロなのです」
「ハッ」
「そりゃそうか」
「そうだ!」
「未遂だったのだから別にいいだろう?」
 であるからこそ!!
 手伝うだけで技術を盗めると思っているなら、それは甘すぎる考えだ。
「なるほど……興味あるよね」
 ……あれ?
 どうやら俺は彼に嫌われてしまっているようだ。
 そう思わずにはいられなかった。
「どういうことだよ」
「良いの、何でもないっ!」
 火はすぐに人の頭ほどの大きさまで膨れ上がった。
 最近はってあれから何年経ったんだと……。
「なんの」
 どこかに遊びに行っているのだろうと、しばらく待っていたのだが帰ってこない。
「ティアナは笛の名手なんですよ」
「ヒースですか」
「俺は一人で東に向かいます」
「えっと……」
「学園って、え、そういうのも教えるの?」
 それを少し疲弊した程度で、そして生身で叩きのめすアレはなんだ?
「まあ、初日だしな」
「ただ迫ってくる大侵攻を前にして、勝算が九割もあるとうそぶく野郎は、今までには一人もいなかった」
「どちらに行かれたのでしょうか……」
 思った以上にタフだな。
 一階フロアが比較的綺麗なのは、ヒースたちがたまり場にしていたからだろう。
「きさま!」
 これからは、もっと自然体でいける。
 彼らは分かっているのだ。
「――退避!」
「……見つけた」
「ここを頼む」
「なんかイテエよ……」
「そうかしら?」
「まあ確かに、この辺りだけ拓けた空間になってるけどさ」
 どちらかといえば、寂しそうだった。
 分別をしている部品、つまりベアリングやティアナ類シャフト関係、僅かなアルミや銅線、そして残っていたエンヒースオイルなどのオイル類であり、残った部品の中から、錆びていない鉄くずを分別していくのだが、一度研修で経験したこともあって、ほとんど迷わずに作業を進めていった。
「じゃぁリン遠慮なしに奢ってもらっちゃうね?」
「家」
「さて、次の顔合わせ会は十一月よ」
「複雑な理由って?」
 身体中が勝手に震えだして止まらない。
 ならば、なにを削るのか。
 どうやら彼女は自分で思っていた以上に緊張していたようだ。
 ティアナが眺める背中。
「絶好の訓練日和だぁね!」
「少し考えておくから聞いてよ」
「グダグダしか合ってねえよ」
 今までも、きっとこれからもそんな調子なんだと思う。
「そうでございますね」
「信頼のおける方には伝えた方がよろしいかと」
「ですね」
「じゃ、入りますね」
「この紙にサインしてくれるかい」
 むしろ、一晩くらいぐっすり草木のように眠る猶予を頂きたいものだ。
「皆が花火を待っているだろうからな」
「久しぶりだね」
「よせやい」
「ふふふ♪わかりました」
「すみません」


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