YabAI Shinbun
『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159581話 著・妹尾雄dAI

「なるほど」
 自身の縄張りに入ってきた不届きものを追い払いにやってきたのだ。
 昨日に続いて今日も実戦か。
「じゃあ先程の採寸は不必要だったのでは?」
 だとすれば、ここは家の近くにある廃屋工場。
「うん!!」
 ――はあ。
 負けられない。
 したレナはそうでないと知ると少女に戻って簡単に了承の声をあげた。
 エリーは目の前に入り口を開けている暗がりを覗き込む。
「え、な、なに?」
「ぇ、ああっ!」
 一体どうしたというのだろうか。
 まあいい、俺も皇館に行ってみたかったからこのままに相談してみよう。
「怒鳴られて、腕を掴まれて、引っ張られた、のに?」
 午前の陽光が寝起きの目に眩しい。
 今はもう潰されてマンションが建っているが、思い出の場所にまた来られるとは思わなかった。
「やっぱりね、顔に出るんだよね」
「お前だけはそれを言うな」
 あまりにひどかったので、つい熱中してしまい三日間連続で猛特訓をしたほどだ。
「ええ、そうです」
 見ていた、あるいは見えて。
「まあ、ココは何でもありじゃろ」
「ああ、まあな」
「アシュレイ」
 本なんて高級品を売るには、それ相応の格式と、伝統が必要になる。
 既に息絶えていた。
「ガァああああッ!!」
「サバの塩焼き定食できたよ!」
「おおおお!」
 俺の腕の偽物のくせして俺でもできないことを躊躇いなくするんじゃない。
 そして、大多数の命が失われ、人類は滅亡の危機に瀕していた。
 そうでありながら、出てきた言葉は気遣う色を持った柔らかなもの。
「エリー、そろそろ起きろ」
「採掘場行くからお前も手伝え」
「それでは、こちらをお受け頂くということで」
「ああ」
「くそ!」
 それを突き止めるまで、接触は控えたい。
「どうするつもりだ」
「疲労回復になるからな」
 モーリスからの旅行客によって増大した需要に答えるために新設されたもので。
 次回。
「どういう物なんだ?」
 常に相手の様子を窺っている。
「……お願い、今日のことは、誰にも言わないで」
 それに、モーリスが答えた。
 彼が働く職場はそういう場所なのであった。
 慌てて引き返そうとしているのを見て俺は嗤った。
「取り敢えず測って貰ってよ」
 モーリスが言い訳をしようとした所に、レナが更に言葉を重ねてアエリーレッドの言葉を封じる。
「でも、ここでいい」
「まいったね、これは」
 そう言えば、レナの機体には薔薇の徽章が付いていたっけ。
「エリーからの手紙が来たわ」
 アシュレイのその言葉には、モーリスも同意した。
 こんな気持ちになるなら、知らなければよかった。
「手も足も出ませんでした」
「随分と厳重ですね」
 そう言いながら、銀髪の童女も近くにやって来ていた。
 呆れたような態度を示されて、モーリスは機嫌を損ねた。
 だがこれは蛮勇でもある。
「この間いらした時にお願いした事、覚えていますか?」
「えぇ」
 周囲から見れば確かに何か怪しい代物を見つけてはいるのだが
「誤解だ、レナ」
 あれ?
「あの人って……この前の」
 エリーは無言で、レナの姿を見た。
「悪いが事実だ」
 確信したように歩みながら、彼女は瓦礫の中からそれを、拾い上げた。
 ……レナが、人間の学校に行きたいと言ったのは、当然じゃろうのう。
 そう思いながら俺は頭の中でエリーにアイテムボックスの使用方法を尋ねた。
 ええと、ここは……。
 伝えた方が良いのか。
「戻らない方がいいのか?」
 ――ズダンッ!!
 叫んだのは若い方。
「もったいないお言葉でございます」
「先を急ぐべきだ」
 なるほど。
「バカだし」
 振り返ったレナに、眉をしかめつつ向ける、男の表情は柔らかい。
 だが、今モーリスは非常に困惑していた。
 その視線を感じ取ってか笑いながら彼も男を見上げながら睨む。
 この問答で冷静さを欠いてくれれば良いのだがと、思案するエリーには大きな懸念があったのだ。
 そして案の定彼女が語った理由は、なんとも推測通りであった。
 幾ら探そうとも、視界に移るのは見慣れつつある樹木ばかりだった。
 綺麗?
「俺、友達のことは絶対護る!」
 彼女としては乙女が摂取する必要以上の量を十分に摂っている。
 だいたいお前たちにすごまれて否といえる教師など俺以外にいるか!!
「あの子は」
「モーリス、説明助かったわぇ」
「だから俺はレナを連れて行くことを反対はしていない」
「なにさ」
「エリーには負けますわい」
 既に信頼などしきっているんだ。
 だが、抜かりはない。
 モーリスが体験するのは二度目になる。
「はぁ、はあ、助かったよ」
 近くに寄って改めてモーリスは男のだらしない体型に呆れかえった。
 ではやはりこの現象は彼女の歌が原因だと?
 疲れ気味の表情と声で、響はあぁ、それならっと切り出し。
 最適解そのものは、単純だ。
 店に写真も飾られている。
 反対側で押さえてやがる!
 いや、見てみろよ。
 レナは机の上の教材を遠慮がちに見つつ話を続ける。
「あんたも自分用に掘っておきな」
「ものにしました?」
 そしてタイミング悪く、痛みにもがくレナとバッチリ目が合ってしまった。
「あの……えろぃって噂じゃないよね?」
「エリー、結構良くない方向に物事考えるしな」
「ああもうっ!」
 そこへ玄関からではなく開いたままだった窓から一人の青年が現れた。
 それよりも早くに黒衣の人物から謝られてしまった。
「今日はここで勝負だ!」
「俺も会ったことあるけど、すげぇいい子だったぜ」
「まだかぁ」
「つか、ほんと真面目だな、お前」
「ひと切れでお腹いっぱいになるね」
 後から鍛えることは可能で。
「………………」
 目で何かを訴えているようだ。
「そろそろ二分か」
 ここで不貞腐れていても仕方がない。
 そろそろ日が出る時間だ。
「でも、もし宝箱があったら、探索が早く終わるぞ」
「えっ?」
 人間である彼にはその理屈は一切通用しない。
「アシュレイはそれだけでした」
「黄紙は?」
 レナ達は苦笑いを浮かべているけれど、それも見えない視えない。
「明日も、約束通り顔を出さないといけない」
 なにか理由があるのだろうか。
「ないかな?」
「このベッドは覚えてるよぉ!」
 レナがそう言い、この店の前も離れた。
「それでいいわよ」
 バイゼルンまでの行程は今日を入れて二日。
 その瞳でにらまれれば、ぞっとして背筋が震えてしまいそうなほど。
 何故、気づけなかった。
「そ……それでは……レナと……」
 ようやく最終決定に近づいてきた雰囲気。
 青年の指がアシュレイを指していた。
 そう思っているようだったが、その力を思えば憧憬のような眼差しは不思議でしかない。
 なのに、これである。
「中盤から後半にかけてのグダグダ感は凄まじいが、中盤に至るまでとクライマックスの展開は熱い」
「ほんと??」
「うあっ!!」
「それは君の態度次第だ」
「誰が教えるかよ」
「何度でも繰り返しましょう」
「半分くれるんですか!?」
 ……こいつ、意外と単純かもしれない。
「はいはい、その話は何度も聞きました」
 が、どういう訳か外見の変化が見られない。
「わかったっ!」
「それで上目遣いで、すっごくやさしく見つめてくれるのとか、きゅんとしちゃうよね!」
「雪も行きます!」
 二週に一度だけ巡ってくる夜番を終え、昼前になってようやく職務から解放されたエリーは、寝台に横になるべく淡々と準備を進めた。
 僅かに声を震わせ、背後から迫ってきた足音に応える。
「犯罪人」
「レナ、それで、体調はどうですか?」
「良かったね、レナ」
「まあ、それで話を戻すとだね、アシュレイ」
「熱」
「三人家族」
 驚いたことに、時々そういう人間がいるらしい。
 だがアシュレイの表情は嘘を言っていなかった。
「わかってるッ!!」
「何もないからな?」
「まあまあ、モーリスは、レナのこと心配してくれてるんすよ」
「俺は安定性があれば何でも」
「どうせなら女子はレナがいいです」
 急にその存在が失われ、その存在が大きいほど、ぽっかり空いた穴も大きい。
 随分と調子の良い言葉だ。
「ほ、ほらあっちもすごいよ?」
 それでも痛いものは痛い。
 休憩時間にしゃがみ込んでくたばって休んでいるとエリーがペットボトルの飲料水を差し出してくれた。
 多少は世界が回っている。
 仕込まれた側にはたまったものではないだろうが。
「店内で」
「真面目か」
「まだこんなところにいたのかよ」
 アシュレイは本能的に察した─────あ、これ俺と同系統の人間だ。
 俺が顔をしかめているのに気付いたエリーが話を続ける。
「え?」
「白湯をいただけますか」
「悪いな、レナ」
 僅かばかりの苛立ちを覚えたが、それ以上に強く感心していた。
 その分野で天才だと自他共に認める彼の才覚は本物であるが、次元航行あるいは。
「なんでさっさと素通りすんの!?」
「おっちゃん、浮気されたの?」
 俺は。
 レナへと問いかけたアシュレイの言葉を遮るようにして、エリーが静かに口を開く。
「ちょっとした夢だったって」
「俺も協力してあげる、他に楽しいことが見つかるまでの間、ね」
 ここではそんなことを考えている者こそ下に行く。
 これは警戒の色だ。
「すっごく想ってる!」
 すでに高校2年の俺のように。
 現在は俺が読み終わった報告書をレナ達も続けて読んでいる状況だ。
 新聞配達してたの。
「まさかこんなに楽しい日が来るなんて……」
「東だっけ?」
「レナ達ってもうそろそろ出かけるじゃない?」
 じきに、ずっと動いていた右手が動きを止めた。
 全高は60mを誇り、初めて見た人間は人種問わずに感嘆の息を漏らすという。
 俺はエリーの手をとって破顔するが、リリはいまいち浮かばない様子だ。
 思いは、どんな調理をして、どんな料理にするかというものに馳せる。
「お疲れ様会を楽しもう!!」
「そそ」
「それは、我がこいつとの決着をつけるためだ」
「どんな手段を使ってでも」
「あの、すみません」
「楽しませてもらうわ」
「温まりますよ」
「お待ち下さい」
「よく、こんな所があると知ってたな」
「こう、下から見上げて分かりやすいちょうどいい高さで見た目も赤くてキレイで」
「お腹を気遣ってくれるとか優しすぎですとか言って」
 視線を落とす彼女の顔に触れる掌が、彼女の顔をゆっくりとこちらに上げさせる。
「突然できるの」
「迷惑でなければ」
「それと……ここから先の俺を、俺はお前に見せたくない」
「レナ……あきらめろ」
「エリー」
 アシュレイは誰にも言わず、表情にも出さなかったが、ずっと秘めていたのだ。
「恥を知れぇ!!」
「なに?」
「違うじょ!」
 初耳だった。
 事実だ。
「それが具体的にどのような技術であったかは不明ですが、おそらくその技術のおかげでしょう」
「辛いよ」
「屋上ですか?」
「そうだとしてもっ!」
「いえ、表には出ておいでではないと思います」
「悪かったな」
 レナはただ、こくり。
 言わなくてはならない。
 隣にいるレナが補足をしてくれる。
 けれど例外はある。
 長いと言っても10時間程度なのだが、それでも長いと思える程に俺を思ってくれているのだろう。
「はい」
「我が聖教会にいかなる御用かな」
「お友達か?」
「おいお前」
「いやですわよぉそんな今更……ふふふ♪」
「空を助けていただいたこと、ありがとうございました」
「まったくエリーは荷物運びじゃないんだよっ!」
 ナインズ、と皆呼んでいる。
 そこから現れたのは、アシュレイだった。
「聖夜は外に出ちゃ駄目なんだぞ」


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