YabAI Shinbun
『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159579話 著・妹尾雄dAI

「ピンクじゃなくなったんだ……つまんない」
「いや、少ないのか」
「無いよ」
「気に入ってもらえたか?」
「ああんッ」
 その被害だ。
「俺はイケると思うがな」
 なにやら雲行きが怪しいきがする。
「そうかな」
「あんまり重くても動きづらくなるから、このぐらいがちょうどいいんだけど」
 三階建てだ。
 アシュレイを見つめる目には、不安の色が浮かんでいる。
「三十四対三十」
「縛っておくと喜ぶって」
「運に恵まれたんですよ」
「えぇと」
「分かりましたわ」
「そりゃ、たまたま、えらい目に合うときもあるけど」
「鈴菜も言ってたけど結構時間かかるね」
「うん」
 すると、その子は警戒するようにシリアルの匂いを嗅いで、恐る恐る咥えて頬張った。
「無いわぁ〜」
 スイッチの切り替わった彼らの視界には既に女学生の姿は無い。
 攻略おめ。
 大音声。
「マジかよッ!!」
 何か自分に出来ることはないか。
 呆れた表情で重なり合うように地面に伏している生徒を見下ろす。
 話の流れとは言え、彼女の過去を思い出させてしまった俺は申し訳ない気持ちで謝る。
 悦に浸るように自慢げに説明しながらリンは盛大に哄笑する。
「うえ?」
「リンでは無理だと思いますよ?」
 ニコニコ顔で言っていた。
 気苦労が絶えず、胃薬が手放せない日々だが最近その頻度が増えている。
 錬金術。
 リンは、かなりやり込んでいるようで。
 だが、いよいよタイミングが差し迫っている。
「はい!」
「俺がんばるよね!」
「ぶぅ〜」
「鎧?」
「無理すんな」
 鈴菜の歯ががちがちとなっている。
 心細いのだろう。
 そこへと至る坂道を多くの制服姿の生徒が上っていく。
 女をとられたショックか。
 じゃあ俺の学校と大学との中間位に!
 実際そうなのかもしれない。
 ヒトでいえば。
 俺は映像を凝視する。
 この空間の出入り口と祭壇の。
 そして恐らくは今晩動くのだろう。
「人海戦術で探るのか?」
 ほんの少し悲しくなって、リンは潤みかけた鈴菜をまたたいた。
「話はそれからだ!!」
 俺は小声で叫んで頭を抱えた。
 服を着て落ち着いたリンは、少しだけ重い身の上を語りはじめた。
 こうして対峙した時に思い出すのは、狼退治のことだ。
「知ッ……知ってたわよ!!」
「坊や」
「すまないな、少し……取り乱してしまったよ」
 穏やかな微笑みに隠れるようにして、真っすぐに俺を捉えるその瞳が全てを物語っている。
 ギイギイ、と。
 それにしてもこの悪食、若いな。
 新人は……。
「そうだったんですか?」
「はい」
「了解」
 それらのことから。
「娼館に行け」
 淡々と語るヒースは、自分たちを卑下しているふうでは無く、むしろ懐かしげだった。
 どちらかというと人間のほうが目立つくらいだ。
 そういえば、説明するのを忘れていた。
「話したいこともあるしな」
 …先のやり取りの答えは、まだ自分の中で出ていない。
「平均がBほどのアシュレイ人では使えないわけですね」
「それと、彼らも協力してくれますし、他にも協力者がいます」
「気味が悪くないのか?」
「あんな短い時間で」
「よくねえよ!」
「生命保険ってそんなに入るの?」
 まぁ、確かにそうだな。
「名家ではなくても御力をお持ちの方はいらっしゃいますが、名家のお力はそれらとは別格ですので」
 きっと錯覚だろうが。
 地下自家発電施設。
「俺じゃない」
「そういうもんすかね」
 こそこそと隠れて見る必要はない。
「あんた、少しだけ足を早めたらどうだい?」
「そうなの」
 その下に着ていた衣服まで脱ごうとしたので、リンが慌てて止めた。
「あの……有難うございました」
「……ありがとう」
 三枚だけで狭い押入れをけっこう占拠してしまいそうだ。
「ねえ、それいいかしら」
 流石は鈴菜。
 はたまた弊害か。
「興味があった者は、俺たち以外にもいます」
 あんた誰よ?
「おはようございますリン!」
「じゃあどういう風になってる?」
「良いのかな?」
 それとも動かせないのか。
 初日は軽めの移動で、疲れを残さないようにするのだろう。
「わかりました」
 正しくもそれは自分達を半ば見捨ててしまう選択であるのだから。
 壁の調査に意識を向ける。
 一同がざわめいた。
「えぇ」
 4年も親友をやってて初めて知った事実。
 外国語において命名の際に意味のある単語を使う事例は多いものの
 それが……。
 ちょっとだけ悔しい思いをしながらも、俺は事前に決めておいた金額50万円を引き出すことに無事?
「ハハハ!」
 頭だけで1m位あるしコイツ。
 ……かもしれないな。
「気をつけろ」
「だが、今はそれどころじゃない」
「雰囲気もちょっと変っちまったし」
「そうなんだ……」
「ですね」
「あたしも毎月のバイト代のことを考えたら、とても買おうとは思えないなぁ」
 尤もその声には少し責めるような感情が乗ってしまっていた。
 これ以上ないような言葉を返されつつ、しかし共に同行するアシュレイからの悲しそうな抗議にも似た眼差しを無視して彼らを送り出す。
「リン、休憩にするか」
「ふふふふっ」
 最後の幕引き役。
 どうせ奥にあるんでしょ?
「まあ、分かんないよね」
「あなたにしてはやるじゃない…………えっ!?」
 リンは勘が鋭すぎて困る。
「やあ、よく来てくれた」
 彼の膝が揺れ動き、その瞳が見開かれたのが分かる。
 あれ?
「だから嫌だ」
「……夜は外出禁止だ」
「腕っ節も強いしな」
「大人しい子だったわ」
 規格外の力を持つ者としてはあまりにアバウトな判断基準といえる。
 お誕生日おめでとうリン。
 一生の宝物だと。
「お湯をずっと炊いていると、失くなってしまうでしょう?」
 はい、わかりました。
「、ストップ!」
 それは、喇叭の音。
「おう」
「燃えて!」
「お前らって、なんでそんなに勝手なんだ!?」
「薬?」
 今までの態度をコロリと変えてヒースはリンに笑いかける。
「うむ」
「今日はお魚の日なんで楽しみにしていてくださいね」
 ぬくもりとアロマのダブル効果はてきめんだった。
「こんな時勢だしな、夜の巡回に出たんだが、壁の外で不審な連中を見つけてな」
「総員騎乗!」
 そんなものもあるのか!
「だいたい勉強苦手っていうくせになんでそういうこと知ってるのよ!?」
「常時見てるわけにもいきませんし、難しいものですね」
「自分で綺麗って言うなよ」
「学校で、何言われてんだか知らないけど」
「綺麗ね」
「そういうものなのね」
「しかしよく覚えてましたね」
「要は、天狗になっていたのね」
 とも一瞬考えたが思い直すことにした。
「俺も今日聞いたばかりだから、詳しいことは知らないわ」
「それに俺、結構誠実よ?」
「疲れたら無理しないでアシュレイに言って、あっちの養成所で声をかけてくれ」
「俺は現世に戻る」
 思わず呟いた言葉の恐ろしさに気が付いて俺は青ざめた。
 軽く溜息をつきながら視線を外す。
 情報も制限されているのだろう。
「ペガサスナイト」
「不気味だった……」
「ハハ……普通に高校生してる」
 やや柔らかくなった視線でこちらの意図を伺おうとする。
 リンは何となく自分の心をアシュレイに見透かされているような気分になり、頬が熱くなった。
 そうだろうとも。
 そして夜にやってくるはずの彼女がなぜ昼間いるかというと……。
 そう言って鈴菜のお腹をコチョバかして遊んでいる。
「うむ、その通りじゃ」
「物資の掘り起こしにどのくらいかかりそうだ?」
「あいつは、本気で鈴菜のことを愛しているんです!」
 だが、それはすべての相手に言えることだ。
 それにこの様じゃな、と後ろ手に縛られた縄を見せつける。
「そうだったかな?」
 リンがゆっくり話を続けた。
 アシュレイを心配してくれていたようだ。
「ヒース」
「君の行動を否定はしないよ」
「そうですけど」
 鈴菜はそこへ行きたいという。
「会えますかね?」
「リン」
「だな」
 それらを考えれば不安もあるが、正直わくわくが止まらないのは置いておいて。
 しかもアホみたいに強いときている。
 そして無造作にそれを飲んだ。
 簡単にいうと、巨大な爪で地面に字を書くようなものだ。
 20m程先で既に肉塊になり果てた、でも先ほどとあまり変わりは無いような気のするヒガエルを見やりながらそう呟いた。
 ぶっちゃけた言い方をすれば、今はリンとイチャイチャだけしていたい。
「大役だね」
 ヒースの表情から笑顔が消えた。
 その中には英雄鈴菜も少なくなかった。
「あぁぁ…」
「何も心配するな」
「……」
「えぇと」
「お、お手柔らかにお願いします……」
 いや、言わないと後々になって膨張してかなり厄介なことになるかもしれない。
 そして俺自身について。
 まあ、兎に角たくさん見てきている。
「……そうなのかも知れないね」
 話の内容を粗方説明し終えたあと、鈴菜が口にした言葉だった。
「そうねぇ……大体四日から五日ぐらいかしら?」
 リンが思いつめるような瞳で、俺を見て言った。
 ヒースの言葉が、妙に耳を鳴らす。
 分かっているとも。
 それは今も変わらない───。
 鈴菜は怒っていた。
 担当クラスはない。
 酸素が欲しい。
「毎年覗きにくる生徒が多くてそうなったとか」
 なるほど。
 リンがびくりと肩を跳ねさせ、薄笑いを浮かべる。
 その疑問の答えを見つけるべく質問する。
「何故って……そんなの分からない!!」
 しかも、今のこいつは、見た目だけは美少女。
 中学一年のとき。
「箸忘れたくせに……」
 まじかよ……目を瞑っていると思ってたのに。
「リン、アクティブ!」
「奴隷志願者?」
 まあ、俺も別に無差別に襲っているわけじゃない。
 過ごして出てきた彼は、ここに来た直後に見せた警戒心が行き過ぎた無礼な。
 それは直接的ではないが露骨にも過ぎる要求だ。
「準備は終わっているのか?」
 それよりも彼が真似した誰かのセリフに共感する。
「別の空間に閉じ込めただけです」
「リンは悪い境遇から這い上がろうともがき、鈴菜は笑って耐えることでやり過ごそうとしてきた」
「――彼奴らは退路の確保を行っておる」
 念のため前置きしつつ。
 強いて言うなら!!!!
 呼吸音も小さく、静かに動く。
「───っ!?」
 おいおい今度は、直球な言葉だな。
 それに、この男……スパイだ。
 何とも、聖女は自らの視線が他人に毒だとはご存知でないらしかった。
 小さく頷いた彼女は一目散に飛び出していった。
「……3」
 よく噛むと大麦の味が舌に広がる。
 いや、下手をすれば首が飛ぶ。
 あいつがいる時点で。
「すんません!」
「とりあえずどうやって負けたのか、分からないんだけど」
「……もしかして、リンもう酔っていたりしますか、あれ」


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