YabAI Shinbun
『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159553話 著・妹尾雄dAI

「カイラム、何をしている?」
「勝手に出たら駄目だぞ」
「君たちが俺に詫びるというなら、聞くが?」
「…………ソウダネ」
 そして、静かにその後をつけた。
 信じられない光景だった。
 目は口ほどにものをいう。
 ギラつく野獣のような瞳。
 天災のひとつに数えられる落雷。
「むはっ!!」
 怯えていた。
「……うん」
「おう」
 無表情ではあるのに眼光の鋭さだけが上がる。
「そう思うのならば、この平穏が続くよう頑張らねばな」
 何度も見ていても、やはり見たい。
「美味しいですよ」
「……え?」
 レナから質問が飛んできた。
 やってしまった……。
 ララが苦痛に顔をゆがめる。
 だが、代償は大きかった。
 俺は、アホみたいに呆けて呟いた。
「なっ!?」
 青年、初夢を見る。
「登れる?」
「いいだろう!!」
「陽菜乃」
「そうしよう」
「今度は出来る」
「なにをいうんですかあなたまで!」
 レナと柚葉が辛辣な言葉で陽菜乃を表し、陽菜乃がそれを肯定する。
 顔の造形の良し悪しなど、さして重要ではない。
 帰り際、玄関先に出たところで陽菜乃が俺に聞いて来た。
 まあ、良いか。
「オイ、ボケ共」
「昔と変わらず、誰かのために身体を張れる」
「すっごく不思議だよ!」
「子供か、お前は」
「………お気遣いなく」
「すると、女性はゆっくりと振り向き、こう言ったんです」
「なんかそれは、相手に同情できそうだな……」
「…………は?」
「うん」
「がんばってね」
「危険です」
 あるいはその気落ちしきった表情からも伝わる強烈な苦手意識のせいか。
 きっとかるたを脅かす為に口にしたのだろう。
「恋人だ」
 情けない声を上げながら、熱した鉄のように赤くなった表情で、レナがおずおずとキスをした。
 それをまったくこなせなかった以上そこにはそういう金が発生する。
 まぁレナと陽菜乃は自身がそういう目にあったのだから元々なのだろうけれど。
 涼しい顔でゲルトを見下ろしている。
「ムッ!!」
「あぁ、俺は構わないけど」
「楽だし」
「無視しないで」
「はい」
「今日からよろしくお願いします」
 アシュレイが気持ち悪い変な生き物を持ち帰り、あげく飼い始めたことに驚愕していた。
 陽菜乃だってそうだし。
 再度正面を振り向きながら周りを見渡す。
 楽しそうにニコニコしながら、いつものように俺の左腕を抱えようとする。
「貴君らの助力、大変感謝する」
 ゆえに陽菜乃は秘術を使用した。
 だが、こうでもしないと感謝の意を表すことができなかったのだ。
 道は曲がりくねり、時折群生している木立を避ける獣道のような、道なりの道だった。
 木の葉に覆い隠されて空を見ることはできない。
 努力して強くなったタイプだと思う。
 簡単にいえば非合法な手段での侵入や技術や情報の奪取を防ぐため。
 あ、ああ確かにそうかもしれないな。
「分かってるけどさ……男を着替えさせて何が面白いんだよ陽菜乃は?」
「どうしたの?」
「さっさと顔を洗って来いよ」
 俺はそっとその場を離れて、闇に溶けた。
 感情的に同意しにくいゲルトが、反対に回る。
「そうは言ってもな」
「あいつら技術を盗むつもりだろう?」
「そうだろうな」
「随分と信頼してもらえてるんだな」
「そうだよね」
「着替え……したいんだけど……」
「ちょっとな」
「知り合いの女衒に紹介してやる」
「万一のことも起こらんじゃろう」
「ソロでも顔が広い人はそうやって自分で人脈作ってたんだと思って」
「そうなの」
 それらを併せ持つ。
 だが、それだけじゃない。
「気にしないで!」
「すっごおおお……」
 ──もう何度目かも分からぬ鉄槌の拳を振り下ろしていた。
 何てことだ、こいつは。
 やっぱり、根はいい子なんだな。
「つまりですね」
 と鼻息荒く言う陽菜乃だったが、レナは昨日ちゃんと買って置けばとやたら後悔をしていた。
「貴方は良く分からないです!」
「以前から考えていたんです」
 ないちゃうからさ!
「すみません」
 ゲルト自身の行動に任せるのが一番だと判断したが、アドバイスぐらい送っても良かったかもしれないな、と思った。
 蜃の対抗策は五つの幼子でも知っているような常識でな。
 皆が皆俺の方を気にするように見やっている。
「いや、うん、それはこちらこそだけれど、レナのね?」
 気を引き締めてかからないと!!
 誰の顔色も表情も動かない。
「もち」
 パキパキと小さな音をたてて、レナの目の前のボウルの中身が凍る。
「…………あなたは?」
 この故意に相手を嘲笑し、相手の痛い所を突きながら話を誘導し
「もう、レナったら」
「んと、今後の生活費について」
「一生懸命ガンバルってことですね」
「視ません」
「レナがいっぱいご飯を食べれるように、頑張ってきます」
「お客様のお名前は?」
 見間違いだろうと、目を擦りながらゆっくり近づくが、どうやら俺の見間違いではないらしい。
 そして中から元気のよいレナらしい声が響いた。
「消せ!」
「独りよがりな似非親が彼女を語るな!」
 その中、アシュレイの言葉が、ゆらゆらと、議場を通りぬけていく。
 ちょっと距離が近いのかもしれない。
「腹減ってるかな」
 ゲルトの後をとことこ追いかけるレナは、時折すれ違う子どもたちと、手を振りあったりしている。
 このまま放置していても、話が進まない。
 ――見つけた!
 ついには恐れすらわからなくなるほど冷静さを失ったのか。
「なんで見てなかったのよ!」
「戦うのが嫌なら探して連れてくるだけでいいから、ねえっ!」
「ちょ、ちょっとやめて下さい」
「はい」
「陽菜乃は、いつも同じなの?」
「その」
 丁度三連休だ。
 んが。
「まあ流石に今からは始められないかな」
 確実性があり、成功が見えていたものがほとんどだったのだ。
「控室で囲まれたっけか」
「陽菜乃……」
「うん、分からないわね……どう返すのかしら……」
「誰に知られても良い…けれどマルヴィナに知られるのは困るよ」
 そして、陽菜乃の瞳はまっすぐにアシュレイに向けられて、一瞬たりとも他のものに気を取られることはない。
 無視されていた。
 陽菜乃の口調は静かに、だが、ハッキリと耳を打った。
 ひさしぶりの酒である。
 ショックを受けるかな?
 常識で捕えていれば理解しようもない。
「はい」
「もちろん」
 アシュレイも、ある程度は本性を見抜かれているものと理解していたらしい。
 そっちか。
 明らかに狼狽した声。
 それらが新しい技術によって今までなら。
「あと、それとこちらの方がお薬を見せて欲しいそうです」
「た……確かに……俺もどうやら庶民だったよ」
 予想される追手の存在から、火を使うこともせずに月明かりの中で休憩をしていた。
「はて、どうすべきか……」
 装飾品は人を選ぶというが、なるほどと思う。
「ありがとうございます」
「こちらは過去に例がないかもしれませんが」
「ううん」
 ニヤニヤしながらアシュレイの肩へと手を回す。
 そういうので精一杯だった。
 切れた携帯を見つめながらそう呟くと、レナが確認してくる。
 満面の笑顔で彼女は即答した。
 とりあえずレナに微笑んでおく。
「視野が広く、記憶力があって、情報分析力に長けている」
 こういう境地に陥って、俺はつくづく人間的に未熟で甘い女なんだと思い知らされた。
 飲まずにはいられないだろう。
「ともに頑張ろうぜ」
 流石年の功だな。
 陽菜乃もそう言うけれど、レナはぐるりと周りを見渡すと、少ししょぼくれた表情を見せつつ口を開く。
 その男が、続く言葉を最後まで紡ぐことはなかった。
 ゲルトも他聞に漏れず、そういう時期があった。
 ここまで遡るのはやめよう、心の毒でしかない。
 やはり陽菜乃の突っ込みは何処かずれていた。
「一番はやっぱりゲルトだと思います」
「解った、明日銀行でおろしてきておくよ」
「よろしくお願いします」
「立場とか関係ないさ」
 残ったところで、どうなるものでもない。
 きゃっきゃウフフである。
「まさか」
「気を付けろって話」
「彼女だって」
「道具って何?」
 陽菜乃はやれやれとばかりに首を振る。
「ま、誰かを守れる男になれってことだろ」
「ここが空いているね」
「そうなんですよね」
 自分たちは新人にしてはついていた。
 ドアをノックすると、中から懐かしい声が聞こえます。
「ゲルト、アシュレイ」
「俺達は穴掘るの手伝うぞ」
「愚かよの」
 声が出なかった。
 だからふたりで楽しんできて……そう告げようとしたレナに、ゲルトが口を挟んだ。
 それをそんな手段で破られては頭を抱えてしまうのも当然だ、と。
 個人の性質という部分でも違いが見受けられる。
「アシュレイ、お帰りなさい」
 美味しそうに食べるゲルトと、嬉しそうにその姿を見るレナを見てアシュレイが言った。
「まだ、左側は決まってねえ」
「必ず、そう言うよ」
「成長期だものねっ?」
「じゃあ……始めるよ?」
「ぐ……ぉっ」
 満身創痍。
「アシュレイッ!」
「このままでは満足に礼も返せない女と呆れられてしまいます!」
 そんなことをしている内に十月も後半にさしかかり、朝晩の冷え込みも厳しさを増してきた。
「誰も口にはしなかったけど」
 皇位継承権順位は決して低いわけではない。
「まだ何も聞いてないじゃん……」
「今から絞るの!?」
「レナもな!」
「良いってことさね!」
「そして、皆の聖夜を護るぞ!!」
「いいの……?」
「うん!」
「申シ訳ナイ」
 もう、名前を間違えて怒られることもなくなってきた。
「本館に行くべきだわ」
 その屋根の遥か上。
 そのためのビキニ!!
「……火災現場?」
 あぁ……だから先ほどのくだりですか。
「お前は探偵か?」
「あぁ……確かにな」
 嬉しそうに頷くゲルトに、レナは大きな息を吐いた。
 既に夜も明けてすっかり朝日が顔を覗かせている。
「あなたたちは俺の太くて長くて固いので新世界に旅立ちたいのですか?」
「やはり知っておられましたか……実は昨晩地下の書庫でこもっていた時、」
 俺たちが頂上に辿りついた瞬間、俺たちは我先に争って水を奪い合った。
 サイバイゼルン美音が鳴りやむ。
「……ぅん……じゃ、じゃあ言っていいよ……」
「俺が彼女の夢を守りますッ!!」
「……あいつめ」
「良いのか?」
「……何か嫌な気でも感じたのかしら?」
「その辺は、理解している」
「まじですよ?」
 いつもの処理作業だ。
「ペガサスナイト」
「あぁ……何とも丁寧な説明をありがとうございます……」
 控えていたその男性隊員が何かを語る前に少女はそれを差し出す。
 もごもごと口を動かす。
「じゃあ俺も入れて四日もエサ抜きじゃねえかああぁぁぁ!」
「おらぁっ!!」
「きゃぁぁぁぁぁあああ!!」
 今日は挨拶だけ済ませて、家に戻って休もう。
 それらを併せ持つ。
「初めて知った人はみんな驚くみたいだね」
「食べるつもりはないよ」
「レナ」
 無理だった。
「明後日なら丁度いいかな」


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