YabAI Shinbun
『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159552話 著・妹尾雄dAI

 身体の隅々の具合を調べる。
 サイズがあった。
「そうです」
 火を消すのを手伝わないと!
 ティアナの動きも明らかによくなってる。
「我から奪う気か!?」
 ともかく、何が言いたいかというと、技術を技術と呼ぶためには実験と検証は必須だ。
「突っ込もうとするな」
「待つのも楽しみのひとつですから」
「……そう言われたらやるしかないですね」
「他意はない」
「お前俺の働きを見てねえのかよ」
 どんどんとレナの株が暴落していっている気がするが、しったこっちゃない。
「凄いな……」
「俺も」
 ちょっと残念に思う。
「圧迫感があるぜ」
「この住所は!?」
 俺のいる倉庫はいまだ誰も入ってこない。
「っ、調っ、教っ!」
 なんとか交渉の場に立つことは出来た。
 少しでも注意を怠れば、逃げられてしまうだろう。
 開けた扉。
「おにくおにくお野菜おにくお野菜おにくおにく!」
「いやいや、悪かった」
「…はい」
 歩み寄ったレナが差し出す右手。
 思考を変えて、周囲を見回す。
 放火が目的ならば、人通りが多い場所は避ける。
 そりゃだってこいつは。
 人影がなく、逃げやすい場所。
 なんて言うわけにもいかないしな。
 頬が熱い。
「このまま放置していれば」
「……知ってる」
「今日は、ちょっと素直になってみるよ」
「いや、十分です」
 年間の運行回数を聞いて、両親の顔色が変わる。
 何せ──。
 ほろ酔いの夢見心地な感触を、銀髪を揺らめかせながら楽しんでいる様だった。
「キュ〜」
「ここに来るのは三年ぶりか?」
 ──なにが、どうなってる。
 あとで時間があれば行ってみようと素直に思うヒースだ。
 が、思い出したように床に落ちたカップを拾い集めると、座り込んだ少女を起こしてその手を引きながら部屋から出て行った。
 分かるのはその声色から十中八九訪問者が女性であるということだけ。
 ティアナは今頃何をしているだろうか。
「どうして分かるの?」
「まあ……そうだな」
「それはそうだろうな」
「……あんたって謝ってきた時も思ったけど」
「絶対に懐かないしな」
「俺もその方が絶対にいいと思います♪俺達は一般の人から見れば、その、何と言いますか、感性が変ですから♪」
 今からこの免状を持って、紹介されたパン屋に向かう。
 ……ん?
 そういう話か。
「だってこんなにボロボロなのに、泣きそうなのに!」
「強き男性の子供を産むことは誉れのようなの」
「はい♪」
「いや……違うって……違わないけど」
「よっ!」
「で、何?」
 その小屋の一番奥。
 その時ちらりと、ティアナの目線がこちらを向いたのがわかった。
「分かる」
「足止め、とどめ、頼んだ」
 起き上がりながら窓の外を見る。
「どこ?」
「……あ!」
「あ!」
「もっと細いのがよかったの?」
 今それを考えるべきではない。
 鳴き方で複数の伝達が可能となっている。
 それだけではない。
「おお……ここが桃源郷だったか……」
 ちょうどいいタイミングでレナから声がかかった。
「これは……凄いな……」
「必ずね」
 もはや会話すら、話を聞くのすら億劫だという彼らさえも目を引かれた。
 不老。
「ちょっとだけ、思考が鈍ってる感じはするな」
 ティアナの両親はステラに向かって何かを言って、ステラは俺と両親の方を交互に逡巡していた。
 イカでデッキから回収した切り札を召喚。
「はい!」
 パンとご飯とティアナダが大盛りのセットを、セドリックが心得たようにウェイトレスのレナに頼むと、ヒースは少し驚いたようだった。
「生きる様って」
「じゃあ、それで」
「あ、先ほどオススメした本」
「拘束をお願いします」
「欲しいさ」
 自分はそれをしなかったのだと。
「二十人か……多いのかな?」
 もう憎悪の対象でしかない。
「うぐっ、落ち着いてるもんっ!」
 語らずともそれが美味であることを顔全体で表現している。
「ヒース、元気かな……」
「なんか飛び出して行ったんでしょ?」
「うん」
「長い間、ここに潜入してるからお前と面識ないだけで!」
 痛い。
「え?」
 何で俺が怒られるんだろう?
 それもそうか。
「はい!」
「あの話をしてもいいの?」
「ティアナ」
 もっともこっちの方は、服から頭髪まで真っ黒であったが。
 ぜひ出てもらいたい。
 しかし、その言葉の内容は異様であった。
「お話は伺いました」
「そいつが会うのをごねるかもしれないし、口利いてあげる」
 まだ朝の忙しい時間である。
「何か欲しいのあるのか?」
 いまだにヒースは跪いたままだ。
 そのヒースの問いに、ティアナは困った顔をした。
 違うだろう、お前という女は、そうではなかっただろうに。
「そんな物出したら本気で潰すけどな」
 レナの目の前を大きな蝶が飛んで行く。
「付近には広大な穀倉地帯もある」
 少なくとも俺はそうだったわ。
「だけど俺は―――」
「さっさと使いきってくれよ」
「こたつならうちにいっぱいあるよ」
「カフェなんかでティアナ満足出来んの?」
 それでも皆、今は、明るい笑顔の少女がこの場所に戻って来たことを、ただ噛み締めていた。
 視線はあちこちを彷徨い、口は開閉するだけで声を発しない。
「お手伝いできるの嬉しいよ」
 そう思い叫び続ける。
 やばいやばいやばいやばいやば……。
「優秀な人はできるだけ地盤強化に使ってほしいのだけどね」
 その話を聞くにつれ、ティアナの表情に焦りの色が見えはじめる。
 俺は褒めただけだし、そこに嘘は欠片もない。
「やらせてくれ!」
「え、おいレナ?」
 風紀委員としての実績。
 右を見る。
 間延びした一瞬を思考だけが泳ぎ回る。
 ある意味で現実逃避だよな。
「受けるつもりだ」
「おまえなぁ」
 彼女が小さく建物の奥を指さすその先を視線が辿る。
 が、それよりも早く動いたのはティアナだった。
 そんな女性を長年待たせ、傷つけてしまったのかという後悔も。
 証拠に受け持った生徒の成績が伸びない。
「……道は遠いかしら」
 黙っていたレナが、しばらくして呟いた。
 動揺も見せずに自分達を冷静に襲った彼女らはおそろしく不気味に映った。
「………っ!」
「こっちだ!!」
「えっ?」
「半年で交代するんじゃ?」
「立てるか?」
 なんとか堪えたけれど。
「……はい!」
 まさかレナが見間違えるはずもない。
 セドリックの言葉を遮って、レナが声を上げた。
「セドリック、ティアナ」
「朝食までまだしばらく時間があります」
「助かる」
「おお、セドリックか」
 下手な言い訳はできない。
 そんな日も今日でおしまい。
 オネショタ。
「……レナってティアナよりも上手だって本人から聞いたよ!」
 おい、このタイミングでレベルアップ告知をしてくるな。
「見て行かれますか?」
「お疲れ」
「取り分はいりません!」
「ああ、あたしは、玄関の外にいるらかね」
 反応が芳しくないからか、ティアナが寂しそうな顔をする。
 何の問題もなく進むはずだった。
「いいね!」
 目立った怪我はない。
 ティアナは当人が思っている以上に、どこか危なっかしい。
 セドリックはティアナを引っぺがした。
「これって、先がとっても硬いんですね」
「そうだね」
「あぁいや、その当人の顔見せか」
「一度合流しに行こう」
「不意打ちでですね」
「もうちょっと近づいたら分かるだろう」
 そもそも、ここに来るのか?
「ここでお待ちを」
「だから仕えるべき主君を探しているんだ」
「恨んで、与えられたものを活かそうとせず、ないものねだりを繰り返すのか?」
「セドリックは、商会をお願いね」
 話が早くて助かる。
「そりゃアンタから見たら、ほとんど人間かもしれねえけど、人間から見たら、全然違うんだよ」
「こんな感じか?」
 もう顔を合わせていられなくなったか。
「レナ……凄い金額になるわよ?」
「マジっすか……ってことは、独り者は俺一人ってこと?」
 ヒースは今回のコトは監視の目が甘かったあいつが悪いと辛辣に切り捨ててしまう。
「さあ、どこなのかな」
 倉庫として使われている小屋に入って、物色する。
「……もっとです」
「この世に唯一の珍品だ」
 周囲を見渡すと人の姿はないようである。
 人影がなく、逃げやすい場所。
 まぁ、相手の足を止めたくなるのは分かる。
 千尋。
「その人はティアナの知り合いですよ」
「ティアナ」
「子を付けただけじゃねえかぁぁぁ!」
 鉤爪のついた二本の脚でのっそりと起き上がり、地を踏みしめながら光に向かった。
「たいした問題は無い場合が多い」
「色んなもの?」
「危ねぇなおい」
 俺の腕の中で涙を流しつつ苦笑いをして話すティアナが痛々しい……。
「それがどうしてなのかさえ、あなたたちは分かっていないのでしょうね」
 一方のレナは俺が同情してやっているというのに、少し不満そうだ。
「そこに行くまでに辞める奴は多いけど」
 圧迫感を感じる。
 俺はもう口を出さない。
 あ、しまった。
 そこは、腐臭漂う墳墓群であった。
 嫌々なのがこちらに伝わるような顔で返答が帰ってきた。
「じゃ、港に行ってみましょう」
「レナが言い出したんです」
「ただの捻挫なんだから」
「ああ……座るか?」
「うん」
「なに、くやしいの?」
「なにを!」
 なんだか、努力が実った!
 女性は主に髪に差し、男性は帽子に差している。
 彼女がした役割分担に不満は無かった。
 どうやら向こうも同じ状態らしい。
「普段抑えてたのが完全に外に出てるわね」
 そのやり方は子供っぽく、ただの駄々だ。
 途中で遮る鏡美の顔はもう笑顔はなかった。
「ねえ……どうしたの?」
「俺はこの時代に来て海産物に飢えていたんだ」
「足跡から、最初は狼じゃないのか?」
「え?」
 俺の即答に、少女は唖然とする。
「大変失礼致しました」
「希少な貴金類が含まれていました」
「よく気がついたな」
「……ヒースたちが……レナのことを教えてくれてたから……」
「こちらへどうぞ」
 やっぱりあの人は天才だ。
 追及をしない。
「難しいのは承知で俺も聞きたいですわ」
 しかし、さっぱりわからないぞ。
 実際は───。
「では俺はセドリックにしましょう」
「とっ!」
「そのための準備ってところか」
 本格的に野宿をせねば……。
 いや、そのおかげでこの程度で済んでいる、だが。
「勿論正規での交付ではありませんが、事故等を起こした場合でも内々に処理されます」
 ティアナの言葉に、ヒースが頷く。
 レナはあまりしゃべらない。
「窓からとか」
 マグロの解体。


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