YabAI Shinbun
『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159551話 著・妹尾雄dAI

「その時になれば、俺は必要な処断をする」
 通常ペット同伴は断られるが法的にレナだけは例外である。
 ここは五階。
 俺はただ浮かんでいるだけの亡霊に過ぎない。
「み、認められませんわっ!」
「そうか!」
「俺のことはここまでにして、冷めないうちにいただきましょう!」
「よろしく言っといてね」
「行くよ!」
「臭くて鼻が曲がってしまうって!!」
「――絡み!」
 しかし状況に変化が訪れる。
 何故か俺に問いかける。
 人々が思うより簡単に。
「うえ?!」
「フフフ……」
「もっと俺にくっついててくれ」
「……よ……かった……」
 覚えている限りの観測された日付と場所と公式発表での大発生の記録を。
「できるだけ、早く帰ってこれるように頑張るからね!」
「………分かったから押すな、ったく……」
 マルティナは少し心配そうな表情を見せている。
 ヒースの言葉にセドリックは頷いた。
「確かに、そんな様子は見られませんね」
 ……俺もそちらに舵を切っていて、自らに戦う力がある事。
 鉄敷の上で、鉄敷を作る。
「起きました?」
 そして水で流し込んだ。
 自分達ならとても。
「さて、何を調べて欲しいの?」
「名前はレナ」
「11人」
 驚いたことに、時々そういう人間がいるらしい。
「いや、それがのう、ワシだけ置いていかれたんじゃ」
「セドリック、そんなとこ行ってたの?」
 そうだった。
 探しに行く必要もなくなった。
「……レナの?」
 目は皺に埋もれて潰れているようだが、ちゃんと見えている。
「うえ?!」
「まさか霊体に干渉を!?」
 その老獪な瞳が震える。
 ――ジュッ。
「そのうちわかるよ」
「はい、ただいま」
 しみじみと感じてしまう。
「だが…」
「……どうされましたかな?」
「年の功ってやつよ!!」
「あれ、早かったですね」
「あんまり参考にならなかったか?」
「やあ、おかえり」
「少し待ってください」
 とりあえずそう言ってレナたちと相談し、どのあたりにテントを張るかを答えたあと、マルティナたちと別れた。
「行くぜ栄光のトラアアァァァァイッ!」
 ある種の下卑さを一切感じさせないような凛とした美しさ。
「あんたさ?」
 全員がうなずいた。
 また交流公開以前から予見できたいくつかの問題への対策が甘かったことも。
 ヒースにすがりつくようにして涙を流すレナ。
 次元漂流を体験し
 マルティナは期待通り腕立て伏せを装って地面にぬるぬるギャリックを突き立てている。
 下手に触れば、全力で報復するとは常々伝えてある。
 見ればパラベラム弾が無数に近寄って来るのが視認できる。
 レナがそう指摘したように、まぁそういう感じだろうなとは思った。
「どうせコネで入学して!!!!」
「絶対、帰ってきてよ」
 二つ折りの手紙を渡される。
「そういうの与えられてなかったし」
 ショタ?
 それには幾らでも方法があるが、恐らくはその中でも最低の方法がそこに展開されていた。
「おう、どうした?」
「…君って変な所で素直というか潔いよね」
 マルティナの買い物に付き合っているつもりだったのだが、しばらくしてリリが俺に気遣ってくれているのだということに思い至った。
「皆、席について〜!!」
 しかし、気が乗らなくなった程度で職替えできる程、それは簡単な世界ではない。
 何となく振り返ったその先。
「それは無理無理無理っ!」
 まるで、自分がこの世界の住人でないかのように。
 結局どこに着陸するの?
「あ」
 無言で三人が動き出す。
 さすがに、こんななりの幼い少女に、盗みの罪を問い詰める気にはなれなかった。
 目を吊り上げながら大声を発する。
「はいぃぃぃぃい!!」
 左手を自分で握り締める。
 風が痛い。
「レナの方がもっと変わってるよぉ?」
「まあそうだよね」
「でも話してもらえて嬉しいです」
 担当クラスはない。
「さてそろそろかな」
「それまで、少し話でもしようか」
「仮装か……そうだな」
 人の趣味なんて変わるもんじゃ?
 …始まるか。
 忘れられない一場面だ。
「胃が痛くなりそうだ」
 ヒースは、だろうね、とでも言いたげな顔をし
 彼が法を犯した理由は今更問うまでもないことだ。
 裏と表で名を挙げた犯罪組織ならば確実に数百年以上は昔から存在していたはず。
 下卑た笑みを浮かべるヒース。
「何かおかしいな……?」
「少々お待ちを!!」
「よかったかい?」
 浮世斑なのだ。
 自分は刺された。
 けれど、それまでの時間がやたらと暇だ。
「ちょ、あんた……まさか?」
「恥を知れぇ!!」
 これまで美女が見せた言動からそれはあまりに真実味があり過ぎた。
「奥にはスゲェお宝が眠ってるぞ」
「そう」
「ええっと……レディ!!」
「しょうがないじゃないですか」
「背びれ!」
 人数は二十人くらい。
「今も健勝かねえ」
 思わず、その白い喉が鳴る。
「助かるよ」
「そういうんじゃないから!」
「お前ら俺をなんだと思ってるんだ!」
「ずっと仕舞っていたんだけど、そろそろ着けても良いかなって、出してみたの」
 俺を元気付けてくれているのか。
「君が周りの子供に小さいころからいじめられたり、泣かされたりするたびに、自分が守らなきゃって思ったんだ」
「聖女かセドリック」
 それでの打ち合いはまさかのセドリックの反則負けで終わった。
「ですが?」
 さすがに日が落ちた時間に若い男女が室内で二人っきりになるのは対外的には問題。
「毎日が楽しいか」
「本気でいってるのそれ!?」
 俺は、心配になりスマホを取り出してすぐに電話をかけた。
 ――はあ。
「そうでしょ?」
「ヒースに合わせてきました!」
 もう考えるのはやめだ。
 そして、捕まえようとしたのだが。
「それが、今では完全に回復して、普段通りハッスルしちゃっているということなのですね」
「ふふ」
 無我夢中……では無かった。
「ふあぁっ」
「申し訳、ございませんでした!」
「次!」
 俺の名前はセドリック。
 俺達が何故旅をしているのか。
 色が変わっているわけだし。
 いつものマルティナなら、俺が仕込みを終わらせる頃に起き出してくる。
 会話こそ成り立ったが、農作業をさせてみてもまるで手慣れた様子もなく、しかし手先は器用で、物づくりの才能が有ることはすぐに解った。
「俺が何も見えないだなんて初めてです」
「そうなんだけど」
「では今の校舎は新校舎が完成後はどうされるのでしょうか?」
「家」
「─っ!」
 焦ってはいけない。
 足は残っている。
「暴力を振るった後でお金をせびるのはどうなの?」
 マルティナが産気づいて、移動を始め、なんだかんだで一時間が経過している。
「どんな理由なの?」
「俺の方こそ失礼致しました」
「あれか?」
 でもまだまだ子供ってところかな。
「うん、実は――」
「あ……そうなのか……」
「この人と同じ顔」
「こちらこそよろしく」
 今更ながら少し緊張して来たかも?
「二日酔いのようですよ」
「この湯葉もおいしいですね」
「羨ましいです」
「そこの花屋で、薔薇を買おうと思ったんだ」
「おっと、これはすまない」
「あ、あんた!」
 そのマストの上に人影ならぬ着ぐるみ影があった。
「っ、それで即座に散弾に変えてくるのだから頭の回る!」
「───っ、そ、それで言われた通りにしたら何か簡単な女のようで嫌です!」
 ただ、彼には半年前以前の記憶が無いのだ。
 そんなの何回でも、頼んでやる。
「そうですね、四倍よりは少し多く増えたようですけど、これも文献の範囲内ですね」
 十秒、二十秒、三十秒。
「六つあるって意味じゃないよ?」
「うん」
「あぁそれでいいよ」
「この状況で一人でどこに何しに行きやがった」
「そらっ!」
 今度もまたある一点を向いて固まってしまう。
 大人としては当然だ。
「最後のセリフは胸にしまっておけなかったのかよ」
 マルティナが甲高い声を上げる。
「えええぇぇぇぇ〜?!」
「ただ、箱を運んだけですよ?」
 一昨日。
 教師の責任や重たいだけの名声を今一時忘れて彼女は気楽に笑う。
「それじゃ、お互いに頑張ろう!」
 残りの男は、隣で震えている。
 気が変わるまで、レナ々生き残れ。
「うむ」
「俺を通して、あなたが少しだけ向こうの言うことを聞く感じかしらね」
「さあ、捕まえたぜ」
 この切り替えの速さにはレナはただ目を白黒とさせているが
 お前達はどうするのかと問うてあえてこんな答えを出させたのだ。
「…え?」
「マルティナだよ!」
「ささ!」
「さてどうしよう」
「分かった!」
 頬を、首を、方を、足を。
「そんなのいい、いい」
 どこまでも残酷で
「もし、今年もそうであるならば、この作戦も気を抜くわけにはいかない」
 マルティナがにこりと笑って、軽く手を振る。
「食欲を刺激するこれをまた食べられる日が来るなんて!」
 マルティナがもろ手を挙げて大喜びした。
「あとうちはヤクザじゃないからね」
 この二人が同じ出自の者かと問われれば、その特徴が違いすぎる。
 レナもその後に続いた。
「何をしている早くこいつらを牢に叩き込め!」
 二人は無言で顔を見合わせる。
 彼女は妙にあたふたとしている。
「起きるまで椅子に座ってよう」
「ただいま」
 一番疑問だった点が氷解した。
 これだけだと、営業合間の休憩を取る普通のビジネスマンである。
「すごいね、岩の隙間からサボテンがこんなに……」
「そこそこどころじゃないですよ……」
「なんだって、こんなところに……」
 そして、そこで見たものは……。
 姿を見られないように隠れていろと伝えていたので、このあたりにはいないだろう。
 そんな徹底する姿に寒気すら感じる。
 何時の間にやら復活したレナが聞いて来るが。
「……なにを?」
 無理だろうなどという曖昧な言葉でなく、濃厚な断言に変わっていた。
「それと」
「何かあったんですか?」
「まぁ今から説明する」
「去年行ったんだ」
「マジか!?」
 ヒースも他聞に漏れず、そういう時期があった。
 それが、ただの自分の我が儘であることはわかっている。
 戦う者であって政治や人心掌握の類は最低限の教養しかない。
「ああ、二、三日前から見かけるね」
 子供のときから金を与え、甘やかして育ててしまったせいで、親の言うことなど聞かない。
 陽はとっくに沈んでおり、空には星が瞬いている。
 今日は月末。
 視界は大きく様変わりする。
「あ…………ぁ―――あ、ぁ」
「ヒース、おめえはよくやってるよ」
 ……体が重い。
「よろしく頼むぞ!」
「セドリック?」
「……さてね」
「色々ってなんだよ」
「それは、ひどいな」
「この短い期間でよくここまでの風を出せるようになったな」
「えへへ」
「降参だ」
 時間切れになるとその空気も止まって、円盤は徐々に動きを止めていくんだ。


前回 『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159550話
次回 『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159552話
おすすめ動画
 
広告
2018 Vrai All rights reserved.