YabAI Shinbun
『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159550話 著・妹尾雄dAI

「だから、アイツを危険な目に遭わせるな」
 それだけは守るつもりでいた。
「……ん?」
「例の作戦について?」
 すると、あっさりと真下に到達し陽菜乃は剣を薙いだ。
 浩介の数は十二体。
「身の程を知りなさい!」
 え?
 虫というのはああも宙で静止するものだっただろうか?
 外人マジ何言ってんの状態だ。
 歴史は語る。
「内緒」
「安くしとくよ」
 人の心は難しいな。
 今回はヤツの裏をかけた。
 追撃を……と思ったら、今までより数倍の力で上に跳ね上げられた。
「では、ここからも手分けして敵の殲滅をしましょう!」
「はい!」
「多分憑依タイプの妖魔じゃないとおもうんだ」
「あたし毎日泣いてたし、あはははっ♪」
「それでいいんですか?」
「ここって廃校だよね?」
「いまだ最強と呼ばれている意味が分かるか?」
「それでどんな様子だった?!」
「ですから色で判断をさせて頂きました」
 悲鳴に誘われるように、俺は体が動いていた。
「うん、おいしいよ」
「ごめんね、カリン、迷惑かけて」
 迫撃に持ち込めば勝ち目はある。
 最後の最後まで足掻いてやるんだ。
「!!!!」
 興味がありありで陽菜乃が聞いて来る。
「生は呪縛」
「陽菜乃?」
「ゲルトは強くて、すごく強くて、それが当たり前みたいに思われちゃうから、頑張ったねって、俺たちは言ってあげなきゃ……」
「ぶっ……油断しないで、くるぞ!」
 強力な魔法を使えば使うほど、その残滓の量は大きい。
 どんな英傑でも武術の達人でも簡単に成せることではない。
 ならばどうすべきか?
 むしろゲルトの手に当たった衝撃で男子生徒の方がたたらを踏んだ。
「御意に!」
「いやいやこの状況で無茶でしょそれは!?」
 まあ、妖魔を相手に踊ってたって言われれば、あながち嘘ではないのだろうが。
「地震程度で破れるような魔法じゃない」
 リンの話によると、ロッサが撃退したということだったが。
「だったらはぐれるな」
 最終的に、ゲルトと陽菜乃を残してしまうと犯人が自動的に特定される。
「リン、離れててくれ」
 それに俺は笑みを浮かべ
 実際。
 リンが驚きの声を上げた。
 俺の正面。
「不用心だよ」
「はい!」
「ある意味では」
「まあ無理はしないことだ」
「浩介達は」
「なんですと!?」
 浩介の言葉に、ゲルトが苦笑する。
「向こうか!」
「こら、早朝だって言っただろ?」
「気が向いたらね」
「はいそうです」
 言われずとも、浩介が地図作成などで多大な貢献をしている事を理解しているゲルトたちは感謝していた。
 陽菜乃の型で覆わせた魔力の形は自由自在だ。
「リンはさ」
 浩介の抹殺計画を。
「ええ、あったそうよ」
「やめてくれよ」
 それがただの肉塊に変わるのに、そう時間はかからなかった。
「どうです?」
 だそうだよ。
「……じゃあ声帯だけ一旦解きますね」
 狭い価値観の家に育ったせいか選民思想に染まり
 まずは勝つ。
 意志はあっても正気ではないのかそれとも狂気に支配されているのか。
「そうはいってもな、陽菜乃」
 そしてしばらくするとピタリと動かなくなる。
 俺は、二回ほどラケットで肩を叩きながら唖然としているリンにドヤ顔を決める。
「これは楽勝だな」
「……クソ……バケモノ……」
 実に年に10回も使わないのではなかろうか?
 何か訊きたいことがありそうだったが、彼は小さく首を振った。
 あんな虫けらのように扱われても、何もできやしなかったのだ。
「いいところ?」
 頭の中に嵐が吹き荒れている。
 そう決意したのだ。
 今から、彼を、此の英雄を殺す。
 リンは反論しようと浩介の眼を見た後に言葉を失った。
 狙うは腕の付け根。
「今、思い出したのか?」
 ――ザク。
 思っているよりもかなり質の良い石なのかもしれない。
 どうやら焔は本当のことを言っているらしい。
 何度も何度も繰り返し練習して体で覚える必要がある技だろう。
 強度の問題を浩介由来の武装開発技術を流用することで解決した彼は。
「ほほほ」
「自分にそっちの趣味はないぞぃ」
「昨日はどうした?」
「ふかふか〜♪」
 勝手に送迎は陽菜乃だと決めつけたように話をしちゃったけれど、本当に彼女になるのだろうか?
「お前、どこの組織に所属してた?」
「罪悪感に駆られて無茶したところで得られるのは自己満足だけさ」
 では少し弱く、権力はあっても社会的な信用がない自分達では疑いを向けられた。
 右肩と左の脇腹がひどく痛む。
「そうみたいよ?」
 それが彼らの理解が及ぶナニカであったのなら驚愕はまだ少なかった。
 今回の襲撃事件。
 それはゲルトも人のことは言えない。
「それじゃ……」
「ゴミ蟲が……」
「俺の目標は、ゲルトと肩を並べられるぐらい強くなることっすから!!」
「あはははは!」
 堀を作り、丸太で幾重にも柵を張り巡らせる。
 やはりゲルトには勝てないのかという劣等感が過剰な怯えとなって。
 しかし、しかしである。
「いや、キノコ狩りの人やリンはまずありえないか」
 滝まで辿り着けば、辺りには幾つもの灯籠が光を灯していた。
 あれ、おかしいな。
 もう少し直接的に言ってやらないと駄目かな。
 その重要な席に出られないほど緊急な事があると。
「うう……」
「ッッッ!!??」
 土を痩せ、水を濁し、火を消して、金を溶かし、木を傷つけ、また土が痩せる。
「うえ……」
 あちこちが破れており、縫い合わせた場合には恐らくサイズもおかしくなる。
 リンが俺に見せつけるように軽く小瓶を振る。
 けど……。
「はい」
 俺は静かに頭を下げた。
「はい!」
「遊ぶんだよね?」
 まるで見えざる巨人の手で挟まれたかのような圧縮。
「狙いは陽菜乃の暗殺か?」
「でも、ちょっと足りないな」
 よしんば。
「俺は確かに故郷の霊界に帰りたいと思ってる」
 その力は驚くほど弱い。
 そうであるのならば。
 だが、それが出来るのなら苦労というものはこの世に存在せず、俺はきっともっと楽に生きている。
 目線の泳ぎ方や声の震え方から、彼女の緊張が伺える。
 どちらが早かったのだろうか。
 他人どころか身内の俺ですら、異能の力に関して口を開く事は滅多にないのだから。
「あ」
「何分元が一般のお方ですから、一度にお伝えするには些か……」
「ああ、ありがとう」
 だが、仮に。
「リン」
「銀色の焔ですって!?」
 経験によるものか、天狗たちよりも積極的な攻撃を加えながら搦め手を多用してくる。
「ひぇっ」
「えぇ」
「そうですか」
 彼らの迎撃行動がほぼ失敗したことに少なからず肩を落とす影が呟く。
 頭上の月は、いまだ変な動きを繰り返している。
 逃げられるものなら、逃げる。
 そしてその一室。
「ええ、俺と同じよ」
「ふっ!」
 純粋に、用意された武器で戦えってことだ。
 謎の自壊と自動再生。
 その割には、仲は良さそうだ。
「おいおい見ろよ」
 反重力システムは健在。
 数人の男女が駆け込んできた。
「昨日の事もある、今日はもうゆっくり休んでくれ」
「冗談だ、冗談」
「あの子、真面目でいい子だよ?」
「俺はリンが人からそんな目で見られる光景を目にしたくないんだよ」
 今行くぞ、三人とも。
 ――――――――――――――。
 空気の振動、魔力の増幅、炎が具現化される場所、炎の鉾が出来上がる角度、空中を浮遊する瞬間の速度、軌道、音、自分が感じられる全てを記憶した。
「そのまま逃げてくれ!」
 リンの憶測と同じ考察を陽菜乃も口にした。
 そんな二人を見てしまったものだから、張っていた気が緩んでしまった。
「このっ、だっ!?」
 出来得る限り、声が歪にならぬよう。
「手が滑っちゃったわ」
「それも前金だものね」
「どうしてですか?」
「大したものだ」
 リンはこの場に自分の味方がいないことを悟って、背中にかく冷や汗の量を増やした。
「え!!」
 突進の勢いそのままに、右手の斧を振り下ろす。
「ただ……」
 戦える。
 それを、初見であるはずの俺に破られた。
 無我夢中でその時はそうでもなかったが、帰って来てから今まで恐ろしさに寒気が止まらない。
「むしろ俺達に近い」
 どうやら互いに既知の相手らしいが……。
 ドオォォォォンッッッッ!!!
 目的は解らずとも入念な準備と調査の下で行われた襲撃であるのは明白。
「問題無いんですか?」
「そりゃあ、警戒されるわい………」
 が、確かに心から反省しているかと言われたら、全くしてないだろうなと。
「ええ」
 最初、俺をボコボコにした鈴蘭は、我に返ると即座に腹を斬ろうとしたので、俺は泡を食って止めに入り短刀を没収した。
「下手をすれば大参事に繋がりますから」
「そうだね」
 その中で一番難しい敵を俺が受け持てば良いのだから。
 こんな事でその機嫌を取り戻すのであれば、もう少しその感情を律してはくれないのだろうか。
「やはりこんな展開になっちまうか」
 その高い迎撃性能を誇る魔法の構成で、鉄壁の守備を築いていることから、その戦略思想が容易に読み取れる。
 言ったら殺されるので言わないけども。
 ――――――――――――――。
 俺もう外行って良いかな。
「すごく苦しそうだよ!」
「話は終わったんだろ」
 一瞬だけ見せたその凄みさえある顔を見逃したまま老能力者は。
「ふふふ♪作戦勝ちですわ!」
「こんな者達と交流するために我らの技術を差し出せば、」
 五人いる。
 電流で体を内側から焼かれるような痛みにのたうちまわった。
 そうでもないか。
「いい斧持ってるじゃねぇの」
 さて、どう答えるべきか。
 これまた、序盤は苦労したが、慣れてしまえばこっちのもんだ。
「ああ」
「あい!」
 銀色の瞳が細陽菜乃、喉が荒々しい蛮声を響かせた。
 吸っても吸っても、うまく酸素が入ってこない。
「あぁ悪かった」
「できるのならば頼む」
「何時も落ち着いている雪が珍しいじゃない?」
 反省は後だ。
「威張んなっ!!」
「あ、うん」
「良くて五分、そうでなけりゃ押し負けるな」
「そのようなことはいたしません」
「ご安心ください、聖女リン」
「特に長距離だ」
「……ゲルトは?」
「え?」
 視線をやった先。
 人ごみを押しのけて進んだ先。
「そうね」
「ホントに理解してんの?」
「うむ」
「自分でもそう思うんだが、なんかしっくりくるんだよな」
「いるはずがないって」
 人生で初めて味わう挫折だった。
「申し訳ございません」
「気を付けて行ってらっしゃい」
「うん……分かった」
「むしろ、良くやったと褒めてやりたいぐらいじゃわ」
 パキッっと根元から折れる。
 ここまで強大であれば。
 すみませんほんと……。
「強欲すぎますよ……聞いていただろ?」
 そうして辿り着いた集会場は珍しく石造りの建物だった。
「お前もそう思うだろ?」
「新型計測器って何時完成した?」
「ありがとうございます」
 おやすみなさい。
「あ」
「そうする事が一番安全ですので」


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