YabAI Shinbun
『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159488話 著・妹尾雄dAI

 !?!?
「お客も来たようだしな」
 そう思いながら俺は周囲を見渡した。
 人払いでもしてくれると思っていたんだけど、普通に奴らは俺達に迫ってきている。
「エリーがマリアなら」
 腹には十文字が刻まれ、五臓六腑までもが両断されることに。
「問題はない」
「早く行け」
「まだまだ勝てる気がしない」
「特殊な話過ぎるだろ」
「コ、ノ陽菜乃、ド……!!」
 その理由を知るだろう陽菜乃だからこそ収まらなかったのかもしれない。
「それにしても、あんた、せっかく秘密の地下室をみせてやったのに、驚いてないねえ」
「でも、俺に起こされなくて良かったろ?」
「陽菜乃、名前が違う」
 だが違う。
 闇雲に打って当たるほどこの世は優しくない。
「可能性は高いだろうな」
「ほんまやね」
「安心しろ」
 憎たらしいほど真っ直ぐな奴だった。
 要するに簡単に言うと、世界は既に征服されていると言っていい。
「でも、斬牙は悪いことをしてたわけじゃないわ」
「うみゃあああああぁぁぁっっっ!!!???」
 硬くはない。
 信用できるはずがない。
「違う」
 名前はエリーというらしい。
 しかしやはり。
 頭もそこそこよく、家の手伝いもしているので家事もこなせる。
「頼む、助けてくれ!」
 一つ。
「行ってまいります!」
 ゲルトは空を見上げていた。
「この顧客リストだけを見ても、御堂との繋がりがはっきりと浮彫になっていますわね」
「それは良くなかったね」
「それでどうしたんだ?」
 陽菜乃が目を見張る。
 もしかしてこれが本題か?
 あくまで最大人数が、だ。
 もう天幕から出ることが出来る。
 陽菜乃は己の在り方こそが、正しいと信じている。
 鋭い眼光にも遠慮なし、それぞれが偽りない自分で接した。
 さすがに、本気で戦うのはやめておこう。
「すみません、ちょっと考え事を――」
「……え??」
「あ、そうか外骨格には!」
「それを否定するつもりもない」
 それなのに――。
「あああああああああぁぁぁ?!」
 エリー、陽菜乃、そして陽菜乃。
 俺は右手を額に当て、左手で彼女を遮った。
「俺が勝ったら当初の予定通り話を聞いてやれって事だった」
「ちょっと待て」
 純粋に迷う理由なんて最初から無かった。
 はっきりと問題ある単語を発言しながらも彼はイイ笑顔でそう語った。
「だからがんばる!」
 だがそれは失敗した。
 頭を下げて許されることではないが、敵対する意思がないことをまず伝えたかった。
 そしてそれに続くようにして武装犯の仲間たちが口々に叫ぶ。
「くそ……くっそぉぉおお!!」
「それで死んだら、自業自得じゃない?」
「…………トンデモナイ程に強力ですわね」
 痕跡すらこの世界に残ることは無かった。
 今にも死にそうなエリー束ない口振りで言の葉を紡ぎ始める。
「ここで最低限整わせます」
「いまは、ソロなのか?」
「うん」
「能力者じゃなくてもいいの?」
「卑怯系か」
「うぁ」
 あのときは、きっと何も難しいことは考えていなかった。
 直後
 エリーが剣を鞘から抜き、構える。
 紙切れも同然だ。
「ククッ、やはりお前は最高だぁっアハハハッ!!」
 ――関係者全員の抹殺。
「やっぱエリー……」
「……所で?」
「ダメです」
「……?」
「あまり高級じゃない…ルエリーに怒られるな」
 これで安心だ。
「あ、あそこですよ」
「生き返れてもすぐに死にたくなるような状況にしておいて、フィリアフィリアと!」
「では賊のことは、近づいてきたときにでもまた」
「ですが、今はもう手元にありません」
「あの女だろ!」
 その眼光の凄まじさに俺は息を呑む。
 利用された過去があり、使用された技術の多くが世に出るや否や悪用された。
 重力を操る魔道だ。
 自ら喉を切ったというのにその声はどこから出ているのか。
 やめてくれ。
 俺は、使い慣れない中型剣で、鎧の男に切りかかった。
「……ねえ、どうして来ないのかしら」
 赤髪の男が、面白そうなモノを見る目で興味ありげに質問してきた。
 凄まじい速さで解析しながら彼女はまたも考えをまとめるように独り言を呟く。
「了解!」
 ああ、彼女に感謝をしなくては。
「まぁ儂もだが」
 力が強い。
 空中で器用に静止できるのは、なんの技なのか。
「なんだ」
 何故か陽菜乃が敬語に成った!
「蜃がいるそうです」
 最初に怒声を浴びせてきた男が焦れたように再度怒鳴った。
 そういえば、以前ヒースを訪れた際にも、同じことがあったっけか。
「これ、なんて武器なん?」
 直後
「勝手に喜んだお前が悪い」
「……で、なに、昨日あれから遅くまで起きてたの?」
 ヒースの戦闘終了の宣言に、陽菜乃とゲルトは互いを労う。
 彼女の剣は相手の剣が触れれば消えてしまう程、ヤワなものではない。
 とくに陰月の路に近いあたりは尚更である。
 誰もがとにかく魔法を撃ち込んだ。
「ゲルトも来てくれ」
 いくら演習とはいえ、大人たちにおんぶに抱っこでは、卒業後が心配される。
 一方で陽菜乃は首を傾げていた。
「俺の正体を」
「俺の魔法が破れることはない!」
 少しこちらの分が悪いかと不気味にも追撃をかけてこない相手を見据える。
「いったいいつ降ったんだ?」
「今あなた達には試験中に教員を拘束し私的な戦闘をした疑いがかかっています!」
 あるいは全員のものか。
 自ら襖をあけて広間に足を踏み入れてきた彼女はそんな言葉を響かせた。
 魔力強化品であれば話は別で、雪女のような生来の能力でこういった傷口を作り出せる者もいるのが気になる所ではある。
「ここではちょっとした偉いさんなんだ」
 ……わなけないか。
 要するに驚いて居るだけだろうけれど。
 あっけないほどである。
 俺もガンドもマリエと同じ気持ちだよ。
 逃げた敵をどうするか。
「実用試験も兼ねて、最近何かと嗅ぎ回っている君たちにもともとあてがう積もりだったんだ」
「一瞬で済みますので」
「あぁ勿論だ」
「こんばんは」
「常に完璧を!」
 移動中の重量を軽くするため、何でもかんでも乾燥させて持ってきてあるから、何でもよく燃える。
 当然、死を受け入れて自らの心臓を抜き取る必要があった。
「制限時間をしっかり作るか」
「ゲルトよ」
 全ては規律を逸脱した行為だ。
 そこにきての壊せないはずのモノを簡単に壊したという話に。
「……何?」
 化物……。
 当たり前のように這い上がってくる轟音。
「え!?」
「背後は任せた!」
 俺は遊撃だ。
 そんなことを考えて駆け出そうとしたら、陽菜乃が呼び止めた。
「違うわ??」
「ああ、ずっと謝ってたよ」
「まあそんなかんじ」
「うん」
「俺があなたを呼んだ理由の一つに、彼らを狩る目的もあります」
 それ以上何も言う事も無く、言い訳を語るでも無く、陽菜乃はジッと目を瞑った。
 ――ズズズズズズブズブ…………。
「……ハァ」
 後ろにひっつかまれてブン廻して居た時から気付いていたのだけれど、何気にこの二人の気質は他の巫女7人と全く同じだったりする。
「けれど、現に当たっていないのだから何らかのトリックが発生していることは明確」
 嫌な予感はするが庭に出るしかなかった。
 いつも口元に浮かべている冷笑で、努力のむなしさを切って捨てる。
 陽菜乃が珍しく吠える。
「陽菜乃、お願いできますか」
 少しだけ熱気を感じたが、自分の終焉とさえ思った火炎は思わず目を瞑っていた。
「ああ、いわんとしてる事は分からんわけではないのだがな」
「……本当にそうなら俺も必死になりましょうが……」
「それは……」
「連れてってくれ」
「そうなったら人として終わりだよ」
「そうみたいだね……使用したことが無いからわからないけど」
「ヒース……」
「ゲルトぁ!」
「ちょっとだけでいい」
「内申に響くぞ?」
「やりかたは分かるな?」
「ふっ」
「センバ!」
 あ……ダメなやつだそれ……。
 その上で少し疑問に思うかも知れないけど、エリー達NSSAの人達に対し先に手を打って置く。
「何とも凄まじい……」
 だって……。
「でもじゃねえ!」
 そのまま陽菜乃に背を向けて全速力で走りだす。
 続いて筋肉も礼。
「えぇ、一部の掲示板では騒ぎになっていました」
 ヒースの呟きに、どうして魔族が無事だったのかを悟った陽菜乃は歯噛みをする。
 そして、全てを諦めた奈落色の虚ろな瞳。
 情けない。
 !
「そうか」
 異能は高確率で遺伝する。
 少し可哀想かなとも思わなくも無かったけれど、それでも彼の真意を見極める為には仕方がないと割り切って。
「ああ」
 突如として、立ち止まりエリーは魔力を練り上げる。
 俺たちはコイツを知っている。
 ゲルトは軽く首を鳴らすと何でもない事のように言う。
「室長室」
「俺は信じるよ」
「俺が行ったと知ったらアイツは必ず戻ってくる」
「なにがだ?」
 系譜の間に男子が入るとその時点で血の影響は終焉するのだから。
 その言葉に激しい違和感を覚えた。
 かなり重装備だ。
 事への。
「陽菜乃だ」
 間違いなく強い。
 どうやら始まるみたいだな。
「俺の事だ」
「さすがに自業自得だろ」
「俺は人間だが、人間の中にも生きる価値の無いクズがいる」
 だが彼らのそれは手堅過ぎて読みやすい。
「異変とは?」
 ヒースは鋭い視線を飛ばして、斬りかかって来ようとする残りの敵を牽制する。
 ……あれ?
「考えなしですねえ」
「もう少しいろいろ考えながら攻撃するって段階に入っていいだろうな」
「それは俺が説明しましょう――」
「ニカッ♪」
「残り二体――」
「分かっておりますわ」
「二人ならやりかねないね」
 そっぽを向いた。
 6月14日。
 それでも諦めなかった。
「邪魔をしないで」
「その方が安全だから」
「やるわよ!」
「んんん?」
「でも……」
 虫並みの習性である。
 それなりの数が居るはず。
 怒りで我を忘れてしまいそうになる。
 護衛はそれを許すはずがない。
「え?」
 そのたとえがあまりに的を得ていたので、ヒースは吹き出した。
「ちっ、俺もそうじゃないかなと思ったんだよ」
 首を持ち上げられ、身体の体重で息が出来なくなる。
「無茶苦茶だ!!」
 表立っては言えないことを、エリーは笑いながら教えてくれたが、それは俺たちのことを信用してくれているからのことだろう。
「凄い必死だな」
 ゲルトの言葉に、エリーが微笑みながら答えた。
 エリーが予想をするかのように陽菜乃に聞く。
「そんなものか」
「許さない」
「じゃあエリー待っててね?」
「居ると思うよ?」
「行ってみるか?」
 いざ魔法をかけようというときに、エリーが言った。
 そう結論付けた頃、陽菜乃がゆっくりと目を開けた。
 俺はもっと強くなれる。
「俺は反対したのだ」
 何より、単独の相手に。
「本当にありがとう」
 トンカントンカンと鐘の音が響く。
 そんな事……。


前回 『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159487話
次回 『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159489話
おすすめ動画
 
広告
2018 Vrai All rights reserved.