YabAI Shinbun
『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159487話 著・妹尾雄dAI

「ねえねえ、この魔虫、持って帰る?」
 世界樹から生まれた精霊たちは、大気中を漂い、様々な現象を生み出す。
「なんなんだ、あの者たちは」
「ティアナもお手伝いご苦労だね」
「そんなに腫れてるか?」
 ヒースの立てた計画は報復という点では見通しが甘過ぎるものだったが。
「言った通りでしょ?」
「言葉で説明するよりも実際に手に持って貰えりゃぁ分かる」
 時既に遅し、だが。
「ネタが古いから」
 何をしたいのか分からない。
「右後ろ!」
「本体よりもおまけにこそ価値があるのです」
 まあいつか分かるなら、それでいいか。
 そこにはそんな光景が見えながら武器を構える残りの生徒の姿。
 どんな生い立ちがあろうとも、彼らの所業は許せることではない。
 そして再び盾を前にかざして、総二郎に正面から相対した。
「ですが、冬鈴菜の血の話をなさっても問題無い程に信用に足る方達なのは間違いございません」
「失礼ですけど記録にも?」
 ──奴がきます。
「……で?」
 その通りです。
 この際だから聞いてみよう。
「うん」
「正確な理由は分かりません」
「いや、本当の事だろ」
「フッ、ハハハッ!」
 コンドルしたにもかかわらず眼鏡は無事だったのか。
 いい奴だなぁ。
 襲撃期間がまちまちで、被害にあっている地域の範囲が広い。
 生理的なおぞましさを感じる形状と数の爆弾が全身にまとわりついているのだ。
 呆れまじりの叱責にあった発言。
 距離を離されていない事が驚きでさえある。
「助かる」
「はぁ、はぁ……」
 そんな下らない事を考えるよりも、まだもう一人危険な状態の人が居るのだからと、直ぐに気を取り直してそちらにライトを当てて見やる。
「でも最初の段階で妖魔が絡んでいて、尚且つ相手が高級妖魔だって気付かないもんなんだなあ……その辺り良く分からないけど」
「……はい!!」
 こっちで焼き鳥である。
 拳を引き、一旦距離をとった。
「えっ、すごい」
「うん!」
 ティアナは、笑顔で俺の両隣へと視線を向ける。
 昔の筐体がマニアに人気なんだそうで。
 今ではあたしの血となり肉と成り骨と成ったのよ!
「……?」
「離して!」
「分からねえけど、いる」
「鈴菜も受けて居るわね?」
 彼らの正体にいくらかの心当たりがあったからである。
「会議」
 それでも。
「そのためにはまず装備です」
 なので、不規則に動くことだった可能。
「ガッ!」
「俺がどうにかする」
「俺の言っている意味が分かるか?」
 そんな自分が許せないという思いもあったのだろう。
 その情けなさに嘆くよりも怒りが沸いていた彼に届く強い否定。
 そういえば、近くにはいなかったけど。
 だが、彼女自身は争うことは嫌いだった。
 理不尽な数の暴力。
 それが入り混じった視線はティアナを孤立させた。
 この世界、ヒトが使う言語は統一されている。
 ティアナという存在の宣伝とその力の誇示という点だけ見れば。
 無いよりはマシだろう。
 追い払うこともできず、身を削られ、やがて力尽きた。
 ……終わったのか?
 鈴菜が小声で答えた。
 それは人々は未だ雑草を食み、木の皮を啜って何とか生きていた時代。
 焦りだけが募る。
「なかなか大変なことになっているわね」
 彼女がティアナに対して警戒してしまうのも無理はない。
「幼女!!」
「うぐぅ……」
 どさりと地面に撃墜し、肉の焦げる嫌な匂いがする。
 ――ヒビが入る。
 時間も無いということで必要なことだけを伝えられる。
 だが。
 少しすると黒一色が緑色へと変わっていく。
「わかったよ」
 朝早く、日課の鍛錬を行うために総二郎が起きだした時には、雨はもう止んでいたものの、分厚い雲に空が覆われていた。
「せめて魔素があればな」
「しかし我らはただ当然のことを!」
 何せ誰であろうとも皆が右だと思う事を左だと教えるのはあまりに難しい。
 彼女は残りを持ち前の耐久で受けきるも風圧で身動きが取れない。
 受付には魔力を視認できる人が採用される。
 ヒースで最も人がおらず、最も危険な地域。
「そうね……少し……」
 なぜかって?
「総二郎」
「当てたよっ!」
「ま、マズイ……血が止ま……ッッ!!」
 一つ――二つ――三つ。
「だからさっきも言ったでしょ!」
 未だに左手で押さえつけていた状態でも
「飛んできてその後は?」
 夜の中で輝きに。
「……本当に気をつけろ」
「わかりゃぬ」
 実際、ティアナがそう思うのも無理はないと思う。
 纏ったモノが数多出現した。
 最も厳粛で無欲で清らかなる行為。
 思い出しか羞恥か反省か。
「ハハ……確定だな」
「嘘をつけ」
「生は呪縛」
 だからこの場は投げナイフである。
「まず、誤解を解いてやる」
「虎狼!」
「えぇっ?」
「鈴菜」
 うん、まいったな。
 ただそれだけで総二郎の作戦を把握した鈴菜は軽い調子で頷いた。
「捕まった」
「でもこういうものなんだと割り切ったよ」
 俺は、そのうちのひとつに近づいていく。
「………はあぁぁぁ………なんなんだろうな?」
「……ふざけるなよ」
「じゃあ始めよう」
「かっこいいなこれ」
 ──本人は手加減の調整がついたので自画自賛中だったが。
 いや、落ち着かなきゃ駄目だ!
「そそっ!」
 数の暴力には、どれほどの精鋭も対抗できない。
 はじめは人々も半信半疑であったろう。
 妊婦やその周囲の者が護符を求めるのはよくある行動となっていた。
 いたぶられ、痛みに悶える人間の声。
 そうでなければ、今ので左腕を失っていただろう。
「あぁ、これはね」
 とティアナが慌てて腕を掴んだことが、実は!
「始まったら分かるわよ」
「ごめんなさい」
 それを省略したということは、なにか起こったのである。
 何の変哲もない、ただのナイフだ。
「まさか大型種?」
「ザッツライッ!」
「ひゃっほおおおおおい!!」
「ティアナ……」
 自分たちの中に裏切り者がいると、彼らも考えているのだ。
 アイテムバッグの中を手で探る。
 ヒースは侵入者を、そして新たな獲物を見つけ、まず喰い付こうとするのでは無く、大きく息を吸い込んだ。
「物語を読み聞かせるのに必要な知識だけです」
「それで昔の知り合いから聞いた話を思い出したよ」
「唯の一度もね」
「俺の顔を足蹴に!」
「流石ですね」
「話は聞いているぞ」
「え?」
「ほら、背中!」
 知っている。
 敵の数は二十……いやもっといる。
 慟哭。
 故郷で話を聞いた限りではその称号を持っている人間は現在、両手の指で足りるくらいだったと思うが。
「何というか」
「はい」
「悪いな、ヒース」
 それからの彼の半生を語るには一言で事足りる。
 息が上がる。
 そしてそれが放たれた瞬間大きく風が吹き乱れ、それらが明後日の方向へと流されていく。
「まがりなりにも役目を持つ家だからある程度の強権も使えたみたい」
「黙れ」
 もう、昼を回っている。
 ぶんぶんぶんっ!
「行ってみるか?」
「ここ一帯は能力者の名家が集う地域よ」
 一度目は許してやった俺は随分と寛大じゃないか、と、そうティアナは付け足した。
 バフワン隊もカイフェ隊も一糸乱れぬ編隊行動によって、はぐれずにうまく回避している。
「みんなにバフスペルかけるです!」
 必要コスト試算。
「見事な建前付きの敵前逃亡の理由だ」
「駄目だよ、ヒース!」
 確認する時間すら惜しみ、すぐに駆け出す鈴菜の足元に、再び数本の矢が突き立った。
「空!」
「だが我は魔帝!」
 目、三!
 十中八九、中身ごと。
「やっぱりティアナもそう思うか」
 だから、だろうか。
 殺されるつもりは無い。
「じゃあな!!」
「おはようございます」
「後で代理人の方がいらっしゃるのでその方の前で顔を見つめて、この人に譲渡すると念じてください」
「取らないです」
「ただ今回の件は――」
 一瞬、上腕が膨張。
 背後、宿の入り口。
 燃やすのではない。
「うっ嘘だ!」
 刹那、二人の姿は消える。
 若干赤みがかった黒髪ロング。
「離れてください拳闘士!」
「石の色もちょうど赤だ」
「ちょっとみなさん!」
「ある意味では」
「なに?」
 そう、理解した。
「やるなら俺だけにしろ!」
「これもか?」
 その主義思想を能力だけを見る選民思想と受け取った彼らは道徳面から批判したのだ。
 その性質は全く違うものの彼もまた一種の器用貧乏といえる存在なのだ。
「……本当ですか?」
「それでね?」
「お前らまだまだなんだから鍛錬が中途で喜んでんじゃねえよ」
「あのさぁ」
「そうね」
「分かってます」
 であれば、そこに礼儀を示せ。
 ヒースが心配するのも無理は無い。
 どちらも事実としては正しい。
「はっ!?」
 ヒースは少し遅れてそのことに安堵する。
「あ、あの、また助けていただいて本当にありがとうございます」
 ティアナの方に視線を移す際に金色だった目が元の黒い色に戻る。
 標的を俺に切り替え、一合交えたときに分かったことだが、その素早い動きにヒヤリとしたことは俺の警戒心を一気に引き上げた。
 少し疲れたような笑いを浮かべたルカネは一度息を大きく吸い込み、これからが本題だとでも言うように再び口を開く。
「だから」
 やはりか……。
「あなたを探していたんです」
 こういう場合冷静になれる時と高揚する場合のどちらかなのだが、敵の総戦力が自分達よりも強いかもしれないと聞いたからか、今は高揚するばかりだ。
「よほど自信があるようだが――」
「鈴菜は聖書とか持つの?」
「かかってきてください!」
「ありがとう、鈴菜」
 これで鈴菜の許可も得た。
「アイツ、泣いてたな……」
 そして接触。
「火事場泥棒みたいだけどね」
「つまり、囲まれてんだよバカッ!!」
 鈴菜が次の話を切り出した。
 動作のひとつひとつが強力過ぎるのだ。
 身長が二十歩を越え、体高が十歩を越える巨大な怪物だ。
 酷い喧騒だった。
 体力の消耗は避けられない。
「いきなり何いっちゃってるのこの人!?」
 不思議だ。
 そう言いながらティアナの頭を撫でる。
 だが、キッと双方を睨みつけたティアナは、次の瞬間に凍りつく事になった。
「……っ!!」
 散開する訳を聞きたいんだろう。
 振り向いた先。
「ありがとうございます」
「風で飛んでしまって」
「ヒースは効率がいいからね」
「そう言ってもらえると助かるよ」
 時代の流れと共に名称や組織の形態は変化していくことになったが
 直ぐに俺の足元に五芒星紋が浮き上がる。
 音速を軽く凌駕した速度で一撃目を確実に決めようと、剣を横から振るう。
 魔法決闘。
「ティアナ……」
 妖魔の証である結晶は……残らなかったようだった。
「すっげぇ……」
 虹色の宝玉を放り投げる。
 その道筋を、今この場でくみ上げねばならない。
 緊張する。
 周りも鈴菜には期待していたはずだ。


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