YabAI Shinbun
『アーティフィシャル・バトル・クライシス』 第159459話 著・妹尾雄dAI

 即ちこれは、魔力の枯渇現象。
「アシュレイに吊るされますよ?」
「おい貴様ら!」
「やはり、難しいですね…」
 親も優秀な能力者であることに違いない。
「はい!」
「え……いや、たまたまっていうか……」
 間違ってはいないんだが……!
「脅すんでしょ?」
「是非」
 代々続く魔剣士の家だけはある。
「目撃者を」
 すかさず鈴菜に手渡しをする。
「事」
 変身道具所持。
 このままではマズイ。
 …なるほど。
「宜しいのでしょうか?」
「そうだな」
 と甲高い声が上がる。
「何があっても」
 ふとレナが口を挟んだ。
 しかし、何人かが固まらず、積極的に前に出ようとした。
「それはそうですけどね」
 どういうことだ?
 そう思っていた。
 気付かれていたらとっくに滅せられている。
「す、すみません……!」
 ちょうどいい。
「それから、残りの9名の処遇はどうされるおつもりですかな?」
 まるで、水がないかのように軽快な動きで移動し、次々に鉢巻を奪い取っていくレナ。
「宗教は問わない」
 そんなふうに思うのも、今更おかしいかもしれないけれど。
 本心から反省しているらしい。
「…え?」
 これまで行ってきた手段が通用しなかったことで相手は酷く動揺しているようだった。
「浩介の師団は前進あるのみ!」
「それに自己再生を付けておけば、傷ついても勝手に武器は修復する」
「っ、おのれっ!」
「それが、報酬か?」
「何だよ、レナ」
「拘束術も使えるし」
 そして呻いた。
「お前は黙ってろ!!」
「あうっ、ぐっ、なに……これ、ぎゃあぁっっ!!」
「あぁ名前か?」
「こんなものっ、ぐぅっ!?」
「これは苦労しそうだなぁ……でもまだ」
 自身だけが見事騙されたことより他の者たちの動きに感心しているのである。
 半壊した離れにアシュレイたちを助け起こすももが見える。
 みんな命がけだ。
「俺のせいにするなと言いたい」
 静かな一連動作、自分の存在を大気に同化させるよう。
「二方」
「あ、それは、そのぉ……」
「あ!」
「鈴菜まさか一人で行くなんて言わないわよね?」
「あいつがどこへ逃げたのか、後を追うぞ」
 ゴォン……ゴォオオン……。
 いざ来るが良い。
 あとで倉庫の数を数えてみよう。
 予定通りの行動をこなす間にも続くのは、彼らの声に引きずられるよう湧いてくる衝動。
「どうです?」
「そんなこと、すべて親がやるのは当たり前だよ」
「ちょうど来たようじゃな」
「そうか」
 ただ、一番の問題がある。
 だから、アシュレイは、自分の行動を肯定しない。
 守りを完全にしなくてはいけない。
 復讐だと、報復であると、自分の行動を宣言する。
「冷たい!」
 そういえば、何かわめいていたなという印象はある。
「鈴菜、ここを離れよう!」
「鈴菜?!」
「あぁ勿論だ」
「…………当然?」
「……フハハ!」
 的なやりとりがなされている。
「……ああ」
 確か水が入っていたはずだ。
「フィロスから、アレ」
「でもあくまでも里帰りだよ」
「ちっ」
 遠距離からの銃撃すら防がれるのであれば、俺の採れる選択肢は一つしかない。
「むしろ鈴菜がそう誤解してたとしたら非常に心外です」
 いつの間にか意識を失っていた。
「今の、俺はただの人」
 レイルズの言葉を途中で遮り、レナが口を開いた。
 そこで何か思い出したのか鈴菜が俺に向けて言う。
「試合終了」
「奴は一応我に協力して居るように見えるが、別の何か思惑を隠している」
「キュウ!」
「自分にそっちの趣味はないぞぃ」
「だが……これで大きな隙が生まれたな」
「なのに奴はそれをしない」
「どこに道があるんだ」
「巨大結界の張り直しを年4か所は最低でもやらなきゃなぁ……今年どれくらい張れるかだよね」
「貴様らぁ―――っ!!!!!」
 火炎に為すすべなどなかった。
「頑張ってくれや」
「ぅわ!」
「え?」
 同じ暗い色でも、鈴菜の瞳は夜空だ。
 物思いに耽る彼を我に返らせたのは扉を叩く音だった。
「楽しんで来いよ」
 具体的には、金と物資をせびるとかだろう。
「……?」
「殲滅戦なら100点満点なんだけどなあ……」
 が、レナが口にした通りこれで確定した訳で。
「そうですか」
 顔だけではない。
「見せ球魔法を効果的に使う、ということですかね」
 もちろん両方ということも。
「うん」
「こいつと3階に居る少女の記憶を視るとたぶん全貌が視えると思う」
「ふざけんなよ!」
「今日はどこまで行かれたのですか?」
「本音はそうも言っていられない状況に置かれつつありますけれど、確たる証拠が無い以上、今はまだ強く動けないのが歯がゆいですわ」
「ですよね」
「うん、まじですよっ」
「だろ?」
「俺を置いていくなよ」
「今ならまだ間に合うと」
 俺は絶句した。
 死亡認定済み。
 沈黙が流れる。
「タンク一人じゃ荷が重い!」
「予知夢?」
 そのやり取りを何度か繰り返し。
 今は、この決闘に、全てを。
 んが、封じるってどういう意味だ?
 絶対にだ。
 彼の鞘が自分の腹部を突いたことに気がつく。
「聞き捨てなりません!」
「いや、待て俺よ」
 鈴菜とレナも小さく感じたらしい。
「そうだよな」
「じゃあ、明日にでも行こう」
「だよなぁ」
「鉄製の機械ですよ」
 仕方ない。
 彼女は確かに見たのだ。
 いないのを確認したうえでこの行動に出ている。
 アシュレイやレナよりも魔法の引き出しは多くあっても、底は浅い。
「あれは……?」
 そして――。
 一瞬で全身に魔鈴菜闘法術をかけ、腕と足により多くの魔力を流すと。
 長年準備をして漸く成った歴史上最大規模となった同盟がなぜこんなことに、と。
「だって」
「え、なんで?」
 立ち上がる火柱と散らばる肉片。
「……………」
 それに一瞬で彼の疲れ顔は消え、無言のまま外骨格を展開する。
 彼等が同年齢であったというのも、大きいだろう。
 詳細は分からないとした上でもそれなりの脅威となる話ではあった。
「なっ……!!」
「お、お前ら!」
 撤退になんら問題はない。
 けれど、か。
 そんなアシュレイだからこそ、此処でその息の根を止めねばなるまい。
 範囲内にいる者達から魔力を吸い上げ、術者に与える陣。
 と目を輝かせて言うのだろうか。
 今のところは。
 存在自体が。
 また綱渡りか。
 焦りからだろうが、レナの考えは、すでに引き返せないところまで行きついてしまっていたのだった。
 家を失った者たちは。
「やったぁ!」
「そうか」
 アシュレイはゆっくりとそれを広げる。
 しっかりと柄を握って剣を何とか抜くことが出来た。
 鈴菜に促された事でようやく名乗り忘れていた事に思い至った少女が名乗り、橙香の右手を握って握手を交わす。
 レナの顔には常のように表情が無い。
「魔法による防御もいいんだよね?」
「はいなのです〜」
「欲しいですね」
 魔力が戻ってきていた。
「――」
 空中に何重にも重ねられ、連なった魔法陣が形成され、爆発しながら増幅する炎が浩介を通過して世界蛇の大穴へ直撃した。
 なら後はゆっくりじっくり観戦するだけ。
「もういい」
 珍しく力強く腕を握られて、レナは戸惑ったような表情で浩介の顔を見た。
 その姿を見るだけで察せられることがある。
 俺一人だけか?
「ちょ〜っと驚かされたかな〜」
「うぐっ!」
 なにそれ。
「それってこれ?」
 路地を塞いでいたチンピラが声を上げた。
「ああもうっ!」
「なにやってんのレナ!」
 五分後―――。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
 また普段から武装を所持する生徒にそれを問うのは少々ズレている。
 アシュレイが見た場所からは、魔力ラインが二本しか見えなかったようだが、後四本の魔力ラインが別々の方角に向かって伸びているはずだ。
「何で?」
 喜色満面とした声をあげた。
 斧使いのリッグス。
 でも、何も出来ない。
 ゆえに、彼は尊大で、傲慢で、孤独だ。
 その光景を視る事が出来た人達は、皆一様に眼が飛び出さんほどに驚いて言葉を発せないで居る。
「そりゃ……使うでしょ」
 レナの視線を感じ、何を指して言っているのかは直ぐに分かった。
 鈴菜がそう言うけれど、確かにその通りだと思う。
「どう?」
 しかし、その中身は人間とはまるで異なる存在だ。
 素材は大量にある。
 この闇夜の中で、さらに爆発と粉塵で視界を塞がれながらもあの矢が刺さる。
「もうこの辺りは安全なんだ」
「承知」
 耳をつんざく轟音が上がる。
 素材は大量にある。
 他のフロアは、がらんとしている。
「貴様は、貴様でやるんだな」
「質問の意図を判りかねるぞ」
 そう思いながら聞いたのだが――。
 え……あれ?
「ぐ、ぐぅ……」
「そうか……しかしアマレナ、一つ疑問がある」
「んなことよりも、女を奪取されたぞ!」
「足を取られて体力を奪われるので、その対策がしたくて」
「ありがとうございます」
「へえ」
 んが、残念な事に大事なところ3カ所は長い蔓が巻き付き器用にも隠れている。
 官僚は一呼吸置いて、続けた。
 二振りのナイフに月光を反射させ、軽く肩をすくめる、その影。
「武装強度を上げるために使うのは効率が悪いので行われてませんけれど」
「俺しらないよ?」
「ぐふっ!」
 でもまぁ……。
「むはっ!」
 ――ブゥゥン。
「これは……」
 レナはすごく寂しそうな顔をした。
「おいおい遊んでるのかぁ?」
「………ほら受け取ったらさっさと次に変われ」
「何かあれば言って頂ければ」
「アイツ、人に教えるの下手だけどね」
「勝手に食うなぁ!」
 定番じゃん。
「何となく怪しい」
「これで戦場からは追い出した」
「鳩が豆鉄砲を食らったって表現そのままだったわね」
 だが、それが何だ。
「どうなったの?」
「西側だ」
「伝令はすでに」
「――手応えが無い!?」
 これ、あれだ。
 人間のほうもそんな彼らに敬意を払い、彼らが人間より早く成年することを認めている。
 どうやら刃を交えたことで情が湧いたようである。
「……ッ」
「いいか??」
「いや、まあ挨拶は基本だから」
「勿論俺が負けるなんてことはないだろうが」
 肩を震わせて咽び泣くレナの背中は、普段の大きさなど全くなく、まるで小学生が泣いているかのように小さくなっていた。


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